人への投資を!
危機の時代にあって、いかに足腰を強くしていくか─。
エネルギー、食料などの資源価格上昇が相次ぐ。インフレが進行する中で、日本は賃金上昇の遅れが目立つ。バブル経済崩壊後、1990年代初めから日本は、〝失われた30年〟といわれ、国力も低迷してきた。
生産性向上の必要性がいわれ、企業もガバナンス改革に迫られた。市場の声をもっと聞けとの圧力もあり、株主への還元は盛んに取り入れられるようになった。
企業にとって重要な資源である〝人的資源〟への対応は遅れた。
30年前、新入社員の初任給は約20万円であったが、30年経った今、約3万円しか上がっていない。人への投資、賃金引き上げという面では資源配分不足ということである。
賃金(報酬)も、本人の能力、実績に応じて支払うというジョブ型雇用を取り入れる企業も出現。日立製作所や富士通などがそうだ。
こうしたことも含め、「人」をどう扱うかで、その企業の人気度も左右される時代だ。
小野直樹さんの変化対応
「変化適応力を付けようと言っています。その際、脱炭素といった大きなトレンドは見間違わないようにして、足下はこうだよという考え方で臨んでいます」と語るのは、三菱マテリアル社長・小野直樹さん。
今は、資源高騰の局面。自動車のEV(電動化)で、銅は1台当たりの使用量が今の3.5倍から4倍にハネ上がるといわれ、銅の重要性はさらに増す。
資源確保の観点から、これからは「リサイクル原料を大切にしていきたい」と小野さん。
ウクライナ危機の中で、この資源循環という考え方は益々強まりそうだ。
同社はE-Scrapという考えの下、「廃電子機器から金・銀・銅その他諸々の金属物を回収するビジネスを展開しています」と小野さんは語る。
DX化も大きな課題で、小野さんは3つのミッションを掲げる。
「1つは、今を強くする。そして明日を創る。これは将来に向けて何をすべきか、ということ。3つ目が人を育てるです」
社長と社員の距離を近くして、対話を重ねながら、変化適応力を高めたいという小野さんだ。