2022-05-10

自分の身だけでなく人類のためを…【早大総長・田中愛治】が語る『新・大学論』

田中愛治 早稲田大学 総長

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創立150年の先を見据えて…

 早稲田大学は2032年に創立150年を迎える。これからの大学を考えて、どう変革を進めるか。
「早稲田ビジョン150があります。鎌田総長(薫氏、前総長)が作られたもので、2032年で150年ですから、もうあと10年しかない。だから、もっと先を見ないといけない。これは、英語で言っていますが、Waseda Vision 150 and Beyond―。
and Beyond とは、この先を考えましょうと。それで2050年までを考えていこうと。それが今後3年間の課題で、Waseda Vision 150 and Beyond のロードマップをしっかりこの3年間で描こうということです」
『世界で輝くWASEDA』は動かないとして、そのロードマップの基本軸に何を据えるの
か?
「去年の秋から考えていて、教育効果を上げるという言い方は少し尊大だなと。教師が、自分の授業は教育効果があると思うのが教育効果。それよりも、学生が学んで効果があるほうが大事。学習効果が上がったかどうか、学習効果のある授業かどうかが問題なので、教育効果より学習効果が大事。学生の視点から考えて、学習効果が上がるようなカリキュラム、教育プログラムを用意する。そういう教育環境を大学が提供していくと」

潜在力の引き出しへ対話を求めて積極行脚

 不透明な状況にあって、未来をどう切り開いていくか─。
 産学連携を進めるために、既にある『早稲田大学リサーチイノベーションセンター』内に『オープンイノベーション推進セクション』を開設。2019年6月には、研究政策立案、産学連携、知的財産管理、アントプレナーシップの4つの機能を統合し、全学的な研究支援組織を立ち上げている。
 また、昨年11月には『カーボンニュートラル宣言』を行った。
「どこの大学も、自分の大学のキャンパスから排出するCO2をゼロにするとおっしゃっていますが、早稲田は一歩先を行くと。主に理工系ですが、最先端の研究をして、その結果、大学院生を育て、いずれ自分の指導教授を抜くような研究をしてもらう。そういう人材を育成しない。その研究の力で、キャンパスのカーボンニュートラル化と、日本社会のカーボンニュートラル化に技術を提供する。人材育成と研究の成果を社会実装に回す。それが社会価値の創造になると確信しています」

 早稲田の強みは何か?

「理工系ではAI(人工知能)と情報科学。それからロボット、ナノテクノロジー。これらをカーボンニュートラルと結び付けて、連携できる。それから人文社会系でも、経営学、環境法、環境経済学も、カーボンニュートラルで横串を刺して、連携していこうと」
 これまでバラバラに研究していたことを、連携させることで相乗効果を生み出そうという田中氏の考え。バラバラに動いていた〝弱み〟の克服でもある。

 一本の柱にまとめ、自分たちの潜在力を掘り起こす─。そのためにはと田中氏は総長就任早々、各学部や職場との直接対話を実行した。
「初年度2019年にまず、全ての学部と職員の事務組織、全部で38カ所回りました。2018年の12月半ばから始めて、19年の1月には全部終わった。20年はコロナになり、途中からオンラインにしました。21年も学部を全部回って、かつ職場にはオンラインで入りました。今後も現場の声を聞いていきたい」
 関係者との対話を求めて、総長としての行脚が続く。

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本誌主幹 村田博文

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