2022-05-12

【システム障害からの出直し】みずほFG社長・木原正裕は「企業風土改革」ができるか?

木原正裕・みずほフィナンシャルグループ社長

「一丁目一番地は信頼回復」─みずほフィナンシャルグループ社長の木原正裕氏はこう話す。2021年2月以降頻発したシステム障害で、当時のみずほFG社長の坂井辰史氏ら首脳陣が退陣する事態に陥った。この再発防止、発生した時の迅速な対応が喫緊の課題。同時に、世界で金融を巡る環境が変わる中、デジタル強化も欠かせない。ここはグーグルと提携し、その一歩を踏み出した形。木原氏が目指す企業の姿とは─。

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障害が起きた時にいかに対応できるか


「度重なるシステム障害で、お客様と社会にご迷惑をおかけしたことを反省しなければいけない。我々の一丁目一番地は信頼回復」と話すのは、みずほフィナンシャルグループ社長の木原正裕氏。

 木原氏は2022年2月1日、社長に就任した。この人事の発端となったのは、21年2月28日に発生したシステム障害。ATM(現金自動預払機)のトラブルで取引ができなくなるばかりか、通帳やキャッシュカードが取り込まれて、返却されない事態に。しかも休日で緊急連絡もうまくつながらず、多くの顧客が待ちぼうけを食うことになってしまった。

 これ以降、9月までに別種のシステム障害が8回発生。金融庁からは2度にわたって業務改善命令を受け、当時のみずほFG社長の坂井辰史氏、みずほ銀行頭取の藤原弘治氏ら首脳陣の辞任に至った。

 障害の原因は機器やソフトの不具合など様々だったが、障害への対応姿勢で金融庁から、「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」という企業風土の問題を強く指摘されるなど、抜本的改革が急務となった。こうした流れを受けて、みずほFGの指名委員会が社長に指名したのが木原氏だった。求められているのは、システム障害の再発防止と企業風土改革という重い課題の解決。

 22年1月17日には金融庁に「業務改善計画」を提出したが、まずはこの確実な遂行が求められる。4月15日には業務改善計画の進捗状況を公表。現時点までに、システム障害を起こした箇所の改修、類似の障害を起こり得る箇所の点検を完了。

 それ以外にも障害を未然に防ぐべく、重要なインフラ基盤やアプリケーションの点検を始めている。「障害はゼロにならないことを前提に、起きた場合でもIT部門、ユーザー部門が連携し、お客様への影響を極小化するために速やかに対応できるようにする」(みずほFG執行役員・危機管理担当の河本哲志氏)

 河本氏が言うように、システム障害をゼロにすることはできない。実際、みずほ銀行以外の銀行でも大小様々なシステム障害が発生しているが、大きな問題になるか否かは事後の対応力の差とも言える。

 その対応力強化はみずほの大きな課題と言えるが、社長の木原氏は「今の取り組みを進めれば確実に対応力は上がる。業務改善計画はしっかり進んでいる」と強調する。

「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」と指摘された企業風土の改革にはどのように取り組むのか。

「『言うべきことを言わない』と指摘されたが、『言ったことを聞いてくれる』カルチャーがあったかどうか。今、社内で盛んに言っているのは多様性、個人の気づきや意見を尊重し、それをベースに建設的な議論をしようということ。減点主義でなく、失敗を恐れることなく改善したり、新しいことをつくっていく会社に変わっていくべき。それによって風土を変え、個人のモチベーションを上げていきたい」と木原氏。

 この木原氏の考えに合わせて、人事制度改革も進めているが、風土を変えるのは一朝一夕にはいかない。継続した取り組みができるかが問われる。

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