都市鉱山(E-Scrap)のリサイクルで
世界トップクラス
─ ところで、今、銅の需要はどうなっていますか?
小野 例えば、クルマが電気自動車にシフトすると、ガソリン車に比べて1台あたりの銅の使用量は3.5~4倍になると言われています。
そういう意味では、銅をいかに供給していくか。先ほど申し上げたとおり、天然鉱石だけでなく、一度使われたものを回収してリサイクルした原料をミックスして銅を作っていく必要があります。
わたしたちのE-Scrap(都市鉱山)の処理量は、すでに世界でトップクラスですが、次のステップとして、取扱量をさらに増やしていきたいと考えています。
─ 改めて「E-Scrap」について教えてください。
小野 E-Scrap は使用済みの家電やパソコン、スマートフォンなどから出る廃電子基板のことです。それには貴金属も含めて多くの金属が含まれています。
具体的に説明すると、コンピュータやスマートフォンの「ボード」と呼ばれる緑色のプラスチックの上に半導体やメモリーなどが配置されたもので、金銀銅などが、天然鉱石よりはるかに濃集されています。
ただ、扱いにくい元素も入っているので、それをうまく取り除くことが技術的な課題になってきます。
例えば、鉛やスズなど、銅の中に入っていたら困るような元素をきちんと取り除いて、分けていくことが必要です。
それらの工程は銅の製錬所だけではできないので、わたしたちの場合、宮城県の細倉にある鉛を扱う子会社や、スズは昔、鉱山のあった兵庫県の生野などに回して、グループ全体で金・銀・銅を取り出しながら、鉛やスズなど他の元素の仕分けをしています。
─ リサイクルをするには、様々な拠点が必要になると。
小野 そうですね。
あと、廃棄物を扱う量が増えるほど設備にかかる負荷が大きくなるので、設備の手当をしっかりすることも大切です。
実際に操業しながら、そうしたノウハウを積み上げてきた経験値は大きいと思っています。
─ それから、今はDXが事業に直結する時代ですが、DXへの取り組みはいかがですか。
小野 2年程前からDXを進めています。「今を強くする」「明日を創る」「人を育てる」という3つのミッションを掲げて、DXに取り組んでいます。
事業として最初にリリースしたのがE-Scrap の『MEX』というプラットフォームです。
E-Scrap の取り扱いについて、様々な取引の透明性や迅速性を高めています。例えば、当社に送ったE-Scrap が今どこで、どう処理されているかをシステム上でリアルタイムに見ることができます。
そうして顧客接点を強化することが「今を強く」し、「明日を創る」ことにつながり、そうしたプラットフォームを作りながら、それに適応した人材を育成していくことにも注力しDXを進めていきます。システムを作ることが目的化してしまわないよう、振り返りながら進めていく必要があると思っています。
─ プラットフォームという言葉が出ましたが、三菱マテリアルの事業においてもプラットフォームは重要になる?
小野 ビジネスによりますが、24時間、世界中の人々を相手にするグローバルな事業ではプラットフォーム的なものが必要になってきます。
特にE-Scrap のようなビジネスは透明性が必要です。また、E-Scrap は集荷競争の側面もあるので、透明性を高めることで集荷をしやすくすることも重要です。
─ 集荷を増やすうえで、透明性が重要なのはなぜですか。
小野 設備があっても、モノが集まらなければビジネスを大きくできません。お客様との信頼関係を築き、お客様が満足できるような透明性の高い処理をしていることを伝えることで、お客様との接点を強化していく。そうして、お客様と直接つながる接点をプラットフォーム化していくことは意義あることですし、将来の事業拡大にもつながることだと考えています。