2022-05-23

【資源高騰、ウクライナ危機・経済安全保障…】 経済のブロック化が進む中、非鉄金属大手・三菱マテリアルの対策は?

小野直樹・三菱マテリアル社長


地熱発電事業も展開


 ─ 今後は、どんな分野に投資をしていきますか?

 小野 これまでお話してきたリサイクルは重要性が増してき
ますので、その分野への投資をしていきます。ただ、リサイクルだけの会社ではないので、リサイクルされたものを銅を中心に機能性を高めて、再度、世の中の役に立つ形にしていく。その両方をバランスよく進めていきます。

 それから、脱炭素の流れの中で地熱発電にも投資をしています。最終的には自分たちが使用する電力は、自分たちが開発して生み出す再生可能エネルギーで賄えることを目標にしていこうと考えています。

 ─ それは国内外で?

 小野 今のところ、国内だけですが、1976年に秋田県の大沼地熱発電所、95年に秋田県の澄川地熱発電所が運転を始め、2019年にも秋田県の山葵沢地熱、それから岩手県の安比で24年の運転開始を目指して地熱発電所を建設しています。

 山葵沢地熱、安比地熱ともに電源開発さんと三菱ガス化学さんとの合弁事業です。

 ─ 地熱発電は今後も拡大の余地がありますか?

 小野 地元の方々の了解なくしてできないことなので、一定の時間がかかりますが、地熱資源は日本の重要な資源であり、それを有効活用することは、社会貢献にもなると思っています。

 ─ 今後の事業ポートフォリオの考え方は?

 小野 一番大きな動きはUBEさんのセメント事業との統合です。今年44月にUBE三菱セメントとしてスタートしましたが、販売と物流は1998年に統合していたので、生産部門とさらに下流の生コン事業まで統合して、より効率の高い事業体にしました。

 国内需要が年々減少傾向にあり、海外展開を強化する上でも、カーボンニュートラルへの対応を図る上でも、効率的な経営を目指すことが必要だという判断です。

 その他、最近ではアルミの事業を譲渡するなど、わたしたちが行うよりも別の方がオーナーシップを持ったほうがよい事業は譲渡を進めています。

 現在の事業ポートフォリオは、ある時点の静的な状態図なので、今後も状況に合わせて変化させていきます。

 ─ 新規事業の育成は、どう進めていますか?

 小野 タネはたくさんあるのですが、今年度はタネで終わらせるのではなく、小さくてもいいから事業化まで持って行くことを目標にしています。

 事業部門では新規事業の育成が難しいので、社外のベンチャーと組んで「出島」としての会社を立ち上げたり、社外も含めて多様な出口を考えていきます。

 固定観念に捉われず、コーポレートベンチャーや他の研究機関とのコラボなど、オープンイノベーションを進める必要があります。脱炭素もリサイクルもそうですが、今の時代は1つの会社で完結させるのは難しくなっています。自分たちだけでやろうとしても広がりがないですし、時間的にも後れを取ってしまいます。

 事業の広がり、事業化へのスピードを考えても他社との連携は強化していきます。

▶創業150年超・三菱マテリアルの抜本改革

おの・なおき
1957年1月14日愛知県名古屋市生まれ。1979年3月京都大学工学部卒業後、同年4月 三菱鉱業セメント(現・三菱マテリアル)入社。 2014年4月常務執行役員・セメント事業カンパニープレジデント、同年6月常務取締役、16年4月取締役副社長、同年6月取締役副社長執行役員、17年4月取締役副社長執行役員・経営戦略本部長、18年6月 取締役社長、19年6月取締役 執行役社長

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