2022-06-01

【政界】安定政権か、それとも衰退を辿るのか?7月の参院選で分水嶺を迎える岸田首相

イラスト・山田紳



激化する最終攻防

 今回、与党内にも予備費の積み増しに対して「どんどん積み増して、政府が自由に使えるようにするのはおかしい」といった慎重論もあった。野党側は2兆7000億円という規模が物価高対策として不十分なことも追及する構えだ。

 5月中に補正予算案を国会提出し、6月3日に財務相・鈴木俊一の財政演説を行い、各党の代表質問を実施。6月8、9両日に衆院予算委員会で審議し、9日のうちに衆院本会議で可決、参院送付する。参院でも2日間の予算委員会審議を行い、13日の参院本会議で成立させ
る。与党は、そんなシナリオを描く。

 一方、野党側は衆参予算委員会をそれぞれ3日間ずつ開催するよう要求。さらに、ロシアによるウクライナ侵略や、それに伴う物価高騰などをテーマにした集中審議も求めている。会期末が近づけば閣僚の問責決議案や内閣不信任決議案を連発し、日程闘争に出ることも想定される。

 最終盤の国会日程は窮屈で、少しでも予算委員会が紛糾すれば、岸田政権はたちまち窮地に追い込まれる。自民党幹部は「野党は参院選前の最後の見せ場として、厳しく追及してくるだろう。あらゆる手を使って内閣支持率ダウンを狙ってくるはずだ」と警戒を隠さない。

 政権中枢からは「補正予算案の審議を一番やりたくなかったのが首相だった。野党に攻撃する機会を与えたことで、支持率は確実に下落する」といったボヤキも漏れる。

 予算委員会を開催する以上、もはや岸田政権がダメージを受けることは避けられそうにない。大きく傷口が開けば、癒す間もなく参院選に突入することになる。いかに内閣支持率に影響しないよう、ダメージを最小限に食い止めるかが補正予算案審議の焦点となる。

 もともと自民党は、このタイミングでの予算委員会の開催は避けるべきだと主張してきた。野党側が岸田を攻めあぐねていることから「手堅い守り」に徹すべきだとの判断が主流で、参院選後に本格的な経済対策を盛り込んだ補正予算案を編成し、秋の臨時国会で成立させる段取りを描いていた。

 ところが、連立を組む公明党が今国会での補正予算成立を強固に主張し、最終的に自民党が押し込まれた。公明党とは参院選で互いの候補者を推薦しあう「相互推薦」を巡り、隙間風が吹いていた。そのため、決定的な亀裂が生じることを避けようとして自民党が譲歩した格好だった。

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