2022-05-31

人口減・少子化や高齢者の孤独化に歯止め 【IBJ】石坂茂社長が進める「婚活ビジネス」

組織化された仲人が数多くの成婚を実現させている



ヤフーから再独立

 冒頭で石坂氏が強調する〝第三者〟の役割を果たしているのが全国3200社を超える結婚相談所の加盟店に所属するカウンセラー。若い世代や副業として始める人がここ数年で増えており、全国に5200人以上いる。IBJはこのカウンセラーの求心力を高め、更なる成婚カップルの創出に向けたサポートにも力を入れている。


石坂茂・IBJ社長

 石坂氏が仲人の存在に着目したのは偶然ではない。1995年東京大学経済学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。海運業界を担当した後、起業を目指す。その際、2000年にITバブルが訪れる。

 しかし、全てのIT企業が成功したわけではなかった。そこで石坂氏が意識したのが「ニッチな業界でナンバーワンをとること」。当時から日本の人口が減少に転じると言われており、婚活市場の需要が高まると見込んだ。

 そこで石坂氏は00年に日本初のインターネット結婚情報サービスとしてブライダルネットを創業。出会い掲示板のサービスが多くある中で、結婚を目的としたサービスにこだわり、価格も大手結婚情報サービスの10分の1という低価格で差別化していった。

 ただ、03年にヤフーの傘下になった後も会員からの悩み相談は尽きなかった。それが「運命の人に出会えない」という悩みだ。そこで石坂氏は結婚相談所に出向き、仲人と対話を重ねた。「仲人はその道一筋という70代や80代の人々。これは日本の宝だ。手間暇が最もかかる部分は、やはり人の手による支援が重要な役割を果たす」と感じた。仲人の世話があってこそ、運命の人に出会える確率が上がる。組織化された仲人が今では同社の強みとなっている。

 そうして石坂氏は06年にヤフーから再独立し、IBJを設立した。12年にはジャスダックに上場、15年には東証一部(現東証プライム市場)への上場を果たす。その後、ツヴァイやサンマリエも買収。これらの直営店をベースにして全国津々浦々に結婚相談所の加盟店網を広げている。加えて石坂氏は「婚活事業は他業種との親和性も高い」と話す。

 例えば、ホテルニューオータニとは婚活支援で協働。ニューオータニのハイクラスな会員層を中心に、婚活を支援することで、家族でホテルサービスを利用する機会に恵まれる。さらに「築地の寺婚」を標榜してIBJの加盟店となったのが築地本願寺。婚活支援を通じ、地域とのつながりを深めていくことも目的の1つとしている。成婚に至った際には、仏前結婚式や披露宴を行うこともできる。

 また、IBJが注力するのが地方銀行との提携だ。少子高齢化により事業承継問題が深刻化する地方において、婚活支援を行うことで地域創生につなげることができるからだ。18年の名古屋銀行を皮切りに、現在15の金融機関と提携している。

 日本は先進国の中でも唯一、結婚という文化を大事にしている国。しかし、時代が変わり、結婚に対する価値観も変化している。石坂氏は「時代の変容に合わせて当社の役割を果たしていく」と強調する。結婚に対する人間が持つ根源的な欲求をどこまで満たしていけるかがIBJの腕の見せ所となる。

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