2022-06-01

過去最高益の【トヨタ】に暗雲 原材料高騰や生産維持などが課題

決算発表をするトヨタ自動車副社長の近健太氏

原材料価格の高騰分、1兆4500億円――。2022年3月期決算で過去最高の3兆円に迫る営業利益を達成したトヨタ自動車だったが、経営陣の表情は危機感に溢れる。同期の原材料価格のコストアップは6400億円分だったが、23年3月期は倍以上に膨れ上がるからだ。

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 副社長の近健太氏は「市況変動は過去に例のないレベル」と語り、「材料使用量の低減などを検討したい」と経理本部長の山本正裕氏も厳しい表情を見せる。しかも、足元では半導体不足や中国のロックダウンで生産レベルが思うように戻っていない。

 そんな中でトヨタが打ち出す対策は「今日より明日、明日より今日と地道な原価低減を進めて体質改善を進めていく」(近氏)ことだ。実際、トヨタは巨額赤字に陥ったリーマン・ショック後から地道な原価低減を進めてきた。具体的には世界の販売台数が08年3月期の891万台から翌期に756万台に減少した際、同社は4600億円を超える営業赤字に陥った。

 一方でコロナ禍でも20年3月期の895万台から翌期に764万台に減少したものの、営業利益は減益となったが、2兆円規模の黒字を維持していた。リーマン・ショック時を100とすると、足元では60~70まで損益分岐台数を下げ、「この13年間をかけて、体質改善は大きく進んだ」と近氏は語る。

 また、21年までの6年間で中国や米国、日本などの主要15カ国のうち、11カ国でシェアが拡大。SUVの「RAV4」をはじめとした主力車種が販売台数を押し上げ、ブランド向上につながっている部分もある。

 しかしながら、冒頭の原材料費の高騰に加え、肝心な生産体制の正常化も課題だ。社長の豊田章男氏は3月に入って4~6月を「意志ある踊り場」と位置づけ、月産の計画を下方修正した。今期の世界生産を970万台で、そのうち国内生産は300万台とした。この300万台はトヨタにとって国内で技術や雇用を守る目安だが、21年度は276万台と割り込んでいる。

 また、原材料価格の上昇が止まらなければ車両の販売価格への転嫁なども避けられない。「どちらの課題もサプライヤーとの協力なしでは乗り越えられない」(アナリスト)と指摘される中、売上高33兆円の目標に向けてトヨタの地に足をつけた経営が求められることになる。

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