2022-06-02

【経済産業省】増加する「出力制御」 再エネ普及に大きな課題

写真はイメージ

電力需要の少ない春、需給バランスを保つため再生可能エネルギーによる発電を一時停止する「出力制御」が増加している。

 4月9日に四国電力管内で、九州電力管内以外では初めてとなる制御が実施された。同10日に東北電力、同17日に中国電力が続き、5月8日には北海道電力管内にも広がった。

 一方、こうした春に電気が「余る」状況とは逆に来年1~2月は全国7地域で電力が不足する見通し。背景には、太陽光発電など再エネの普及に、貧弱な送電網などが対応できない電力システム全体の課題がある。

 東北電管内の場合、太陽光の出力は2013年3月は38万㌔㍗だったが、21年12月は725万㌔㍗に増加。北海道電管内では、15年3月末は太陽光、風力合わせて93万㌔㍗だったが、今年4月末時点で274万㌔㍗に増えた。再エネ設備の増加に伴い、さらに出力制御が増加している可能性が高い。

 一方、経済産業省がまとめた23年1~2月の電力需給の見通しでは、供給力に対する需要の割合を示す「使用率」が、厳しい寒さを想定した場合、東電管内ではマイナス1.5~同1.7%まで低下する。中部から九州までの6地域も2.2~2.5%となり、安定共有に最低限必要な3%を下回る見込みだ。

 冬場の電力不足も、出力が冬場に落ちる太陽光発電の普及が一因となっている。再エネが増加すれば、電力が不足する際に柔軟な焚き増しで供給力を担う火力発電の稼働率は低下し、発電事業者は休廃止を進めざるを得ないためだ。

 再エネの普及と安定供給の両立のためには、地域間送電網の拡充や、蓄電池の活用を進める必要がある。ただ、送電網の整備には莫大な投資や時間がかかる。蓄電池による需給調整にも技術開発による高性能化やコスト低減が不可欠で、大手電力幹部は「どちらも簡単に実現する分野ではない。今後しばらく、出力制御や逼迫するケースは増え続けるのでは」(大手電力幹部)と指摘している。

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