2022-06-07

【学研ホールディングス・宮原博昭】の課題 教育・医療福祉に次ぐ3本目の柱の構築は?

学研ホールディングス社長 宮原博昭氏



グローバル化の課題

 教育、医療福祉に次ぐ3本目の収益の柱をどう掘り起こしていくかという課題。人口減、少子化・高齢化という大きな流れへの対応である。
「総人口は減っていきますからね。高齢者の相対人口率は増えますが、2041年には減少に転じると。シェア争いもありますが、それまでにしっかり世界に出て行かないといけない」
 グローバル化も当然視野に入れての経営戦略。医療福祉については、2035年以降のことを考えて「今から準備している」ということであり、「教育については、もう今やっておかないといけない」という認識だ。

 教育事業のグローバル化には既に着手しているが、試行錯誤もある。経済成長を辿るインドでは、科学実験教室で約45万人の児童を集めたが、今はゼロになった。一方、タイでは約15万人の児童を集め、成長中だ。
 中国では、新興の教育事業大手である新東方と提携し、やはり『科学』領域で事業を拡大させる。中国の場合、国民の所得格差、教育格差が国家的課題となっている。また、教科学習に対して政府規制が入る。それぞれの国で教育は最重要施策の1つであり、規制もそれぞれ違う。郷に入らば郷に従えの精神で臨むことになる。



逃げない「人」をどう育てるか

 思い起こせば、12年前に宮原氏は社長に抜擢された。

 病身の遠藤洋一郎前社長から「君に次を任せたい」と言われたとき、「考えさせていただきます」と答えるのも失礼になると思い、「やります」と即答した宮原氏。
 そう答えながらも、「なぜ、私なのですか」と尋ねたところ、「お前は唯一逃げないからだ」
という言葉が遠藤氏から返ってきた。そして、「お前は玉砕しないからな」という言葉が続いたという。
 経営をつなぐことが決まった瞬間である。
「難事から決して逃げない」─。この言葉が宮原氏の社長としての生きざまに投影されている。

 経営の行方を決めるのは、結局、「人」である。特にM&Aを実行していく中、M&Aされた側の人の力をどう活かしていくかは最重要課題だ。

 同社がM&Aした塾『創造学園』出身の福住一彦氏、認知症関連サービスを提供するMCS社長の山本教雄氏、海外事業支援サービスのアイ・シー・ネット社長・百田顕児氏は、学研ホールディングス本体の取締役としてボード入りしている。M&A先の「人」の活用だ。

 創造学園の創業者は、大橋博氏(1944年生まれ)。幼児教育(保育園・幼稚園)から高等学校、そして大学・大学院まで手がける学校法人「創志学園」の創立者として知られる。
 その大橋氏は学校経営に専念するため、塾の『創造学園』の経営権を学研に譲渡。そして、塾経営の人材が欲しいという学研側の要望に応えて、側近の福住一彦氏を「寄越してくれた」(宮原氏)という。
 現在、福住氏は学研の教育戦略担当の常務取締役を務めている。M&Aも「人」同士の信頼があってこそ成り立つ。結局、事業の成否を決めるのは「人」の使命感。そして活力だ。

「学研は学研らしく生き抜いていきたい」という宮原氏の生きざまである。

〈編集部のオススメ記事〉>>【ヒューリック会長・ 西浦三郎】の危機管理学オフィス賃貸に加え、介護、 学童保育に注力する理由とは

本誌主幹 村田博文

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事