2022-06-10

【国鉄分割民営化35年】JR東日本・深澤祐二社長が語る「“しなやかさ”が今後のキーワード」

ふかさわ・ゆうじ
1954年北海道函館市に生まれ。78年東京大学法学部卒業後、日本国有鉄道に入社。87年の国鉄分割民営で東日本旅客鉄道(JR東日本)人事部に配属。2003年総合企画本部投資計画部長、06年取締役人事部長、JR東日本総合研修センター所長、08年常務、12年副社長を経て、18年4月から現職。

コロナ禍で2期連続の最終赤字となった東日本旅客鉄道(JR東日本)。しかし、ソフトやハード面で次の手を打っている。社長の深澤祐二氏は「次の将来に向けた未来の街づくりができる」と現在進行中の「高輪ゲートウェイ駅」周辺の大規模再開発に力を入れるなど新しい事業に手を打っていく考え。また、ダイヤや運賃にも柔軟性を持たせる仕組みを検討し、権限移譲を進める組織改正も行う。深澤氏が見据える新たな鉄道会社の姿とは?

進む「JR東」の高輪再開発、鉄道による移動から街づくりへ

コロナの教訓とは?

 ―― コロナから約2年半が過ぎました。今年は国鉄民営化から35年という節目でもありますが、この2年半の教訓とは。

 深澤 この35年間にわたって順調に基盤づくり、収益も上げてくることができていたのですが、コロナ禍で蓄積したものをかなり吐き出してしまいました。2年連続の赤字ということで、非常に辛い2年半でした。2022年度は何としても黒字化を達成する決意で、グループ全体を挙げて取り組んでいます。社内的に言うと、我々にとって今年は復活の年であると。

 これまで順調に来ていた分、会社としてぜい肉的な部分もありましたので、それについては大分スリム化してきましたし、社員一人ひとりが具体的に何かをやらなければならないという意識転換が非常に進みました。その意味で、ピンチをチャンスに変えていくベースは準備できたのではないかなと思います。

 ですから、それを成果に結びつけていくことが大事です。お客様へのサービスや地域への貢献、あるいは社会的な課題であるCO2ゼロといった環境問題も含めて、しっかりと社会的に意義のあるグループになっていこうということです。

 ―― 世代交代も進み、今年は区切りでもありますね。

 深澤 そうですね。あと2年ぐらいで国鉄からJRに移ってきた人たちは定年を迎えます。完全にJR世代に切り替わるのです。3月に東北で強い地震が起きて東北新幹線が脱線しましたが、脱線からの復旧や構造物の復旧に当たっては、我々だけでなく、グループ企業やパートナー企業、協力企業などが協力して事に当たり、現場の人たちも全体が若返っています。

 現場で指揮を取るリーダーも若返っており、技術もしっかりと継承できていて世代交代が進んでいると感じました。私も何度か現場に足を運びましたが、こういった光景を目の当たりにして世代交代を実感できました。

 ―― コロナで駅から人がいなくなり、その光景を見た社員も感じるところがあったと。

 深澤 ええ。今年から来年にかけて大きな組織改正を行います。そのポイントは「融合」です。当社は鉄道を中心とした鉄道事業、駅ビルやホテルといった生活サービス事業、そしてITなどのSuica事業という3つが大きなドメインです。これらが合わさっているところで、どんなビジネスを生み出していくかというのが1つです。

 そしてもう1つは権限委譲です。できるだけ現場に近い所、お客様に近い所で判断し、スピーディーに物事を動かしていくことです。そこで3月にエリアごとに所在する各駅と乗務員区(車掌区・運転区・運輸区など)を統合した「統括センター」と複数の駅を統合した「営業統括センター」の2種類の機関を新設しました。

 この結果、働き方も大きく変わっていきます。運転手が駅の仕事をすることもあるでしょう。今まで本社や支社で行っていた企画的な仕事を統括センターが行うという権限委譲になります。

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