2022-06-10

【国鉄分割民営化35年】JR東日本・深澤祐二社長が語る「“しなやかさ”が今後のキーワード」



強みは鉄道や駅などリアルの場

 ―― 今までは縦割りで仕事を回していたのですね。

 深澤 そうですね。それを改めていきます。例えば、ICカードのSuicaの拡大では、今までは本社や支社が中心でしたが、それを現場の人たちが街に出ていって広げていくと。駅に人が来るのを待つのではなく、自ら街に出ていくのです。

 ―― Suicaはかなりの可能性がありますね。

 深澤 そうですね。足元での発行枚数は9000万枚を超えていますが、これを鉄道だけでなく使えるエリアも広げていきたいと。地方でもバス会社さんなどと連携して「地域連携ICカード」を出しました。これにより街中でも使いやすくなります。

 そして今後、モバイルのSuicaなども広がっていけば、ダイナミックプライシング(変動料金制)も導入しやすくなりますし、当社が立ち上げたeコマースサイト「JRE MALL」でのショッピングも簡単にできるようになります。当社の共通ポイント「JRE POINT」の会員も約1250万人います。また、既にauさんとも連携していますが、他社さんとの連携も広げていけると思っています。

 ―― 他社と連携する場合のJR東の強さとは何ですか。

 深澤 やはり我々には鉄道や駅ビル、駅ナカ、ホテルといったリアルの場があることです。しかし、当社はデジタルやバーチャルはあまり強くありません。逆に言えば、バーチャルの世界でビジネスをしている方々にとっては、リアルとの接点をどうつくるかが重要になります。

 スタートアップにしても、ロボットなど新しいことをやろうとするアイデアと知恵はあるけれど実験する場がない。そこで我々の駅や鉄道を使ってもらうことができます。これだけ多くの方々がご利用する場は世界中を見てもありませんからね。

 ―― では、祖業でもある鉄道。この仕組みをどのように変えていこうと考えていますか。

 深澤 鉄道事業の経費率が約85%で固定費の割合が高い。これをどう柔軟にしていけるかが需要です。その具体策としては、1つがダイヤです。3月にダイヤ改正を実施しましたが、例えば新幹線では毎日走らせる定期列車の比率を少し下げて、お客様が増えそうだったら臨時列車を増発していくと。それをできるだけタイムリーにやっていく。

 様々なデータが集められるようになってきましたので、事前のシミュレーションによって予測がかなり正確にできるようになってきています。かつては1年に一遍のダイヤ改正、臨時列車は3カ月に一遍といった具合に、かなり固定的な運用を行ってきました。しかし今後は、お客様の需要に合わせてコストを上下できる比率をできるだけ上げていこうと考えています。

以下、本誌にて

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