2022-06-14

【宅建業法改正】住友不動産が他社に先んじて 「電子契約」にカジを切った理由



検討から契約までオンラインで完結した事例も


 実際に電子契約に取り組んだ現場の営業担当者の反応はどうだったのか。「書類を電子契約用に作成するのは確かに大変だったようだが、その後からは『手続き、契約が非常に楽になった』という声が多い」(吉田氏)

 今回の電子契約の導入は法改正によるものだけに、当然、他の大手も取り組む。だが、住友不動産が顧客が自宅にいながら契約できるようにしているのに対し、他社は顧客を販売センターなどに呼んで、そこで電子契約をするという形態がほとんど。これは大きな違い。

 機器の不具合が怖い、本人確認をどうするかといったことが主な理由と見られるが、なぜ住友不動産は完全オンラインに切り替えることができたのか。

 「社内では、当社もお客様を販売センターなどにお呼びした方がいいのではないか?という議論も確かにあった。しかし、契約前までの工程を非対面化して運用した経験の中で、契約を遠隔で行っても問題ないという意識が醸成されていた」

 不動産の契約において本人確認は重要。住友不動産では、物件購入の申し込みや銀行の事前審査の段階で本人確認書類と本人の照合を徹底している他、契約がオンラインだった場合にも、事前に契約書類は送らず、画面上で本人と確認書類を照合した上で送付する形を取っている。それによって家族や他者に書類を送ってしまうといった間違いを防いでいる。

 前述のように、住友不動産は契約より前の工程を非対面、オンライン化してきていた。20年6月には「リモート・マンション販売」を導入、同7月には非対面販売を強化するために都内で展開するマンションギャラリー内に「リモート販売センター」を開設するなどしてきた。

 「コロナ禍にあって、お客様へのご案内の機会、我々の販売機会を逃したくないと、会社として業界に先んじて一気にカジを切った形」(吉田氏)

 契約までの工程が非対面化、オンライン化されたことにより、営業担当者は不動産の売り主、買い主への対応といった「本業」にこれまで以上に注力できるようになった。「コロナ禍や法改正を受けた取り組みだったが、今や我々の営業には欠かせないツールとなった」と吉田氏。

 不動産のDXに詳しい、ニッセイ基礎研究所准主任研究員の佐久間誠氏は「購入者、不動産会社双方にとって煩雑だった作業が電子化されることで、より有益なことに時間を使うことができるようになる。さらにデータベースの構築が進むことで、不動産取引のさらなる透明化が期待される」と話す。

 顧客が求めていればリアル、オンライン関係なく取り入れる。今後はさらなるペーパーレス化、オンライン上で取得した情報を活用したデータベースの構築などが課題になる。高額な不動産取引でも確実にデジタル化が進む。

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