2022-06-21

【ゲノムテクノロジー】世界初の「子宮内フローラ検査」で不妊治療に貢献ーー医療ベンチャーVarinos

桜庭喜行Varinos代表取締役CEO


子宮内の菌の割合が
妊娠・出産に影響

「対外受精でも10~30%しか成功しない。成功率向上に貢献したい」─。

 もともと子宮内に菌は存在しないと言われてきたが、実は微量の菌が存在することが論文で
判明。そこで、桜庭氏は子宮から取った検体を解析。子宮内に存在する菌のDNAから子宮内の菌の割合を調べる「子宮内フローラ検査」を開発、17年12月実用化させた。

 ラクトバチルスという菌が少ないと子宮内フローラ(細菌叢)が悪い状況にあるため、ラクトフェリンを飲んでラクトバチルスを増やし、子宮内の環境を改善、妊娠しやすくする治療に貢献。バリノスは、この子宮内フローラ検査と治療に使うラクトフェリンを販売している。

「世界初の検査だったので、当初はいろいろな治療を試しても、妊娠・出産に至らなかった患者さんに使っていただく」ことから普及を進めた。

 それから約4年、今年2月末時点で累計1万8000件の検査を実施。論文などでも成果が発表され、今では約250の施設と契約。「初診で来た方全員
に受けていただくクリニックも増える」など、普及が拡大。

 先進医療に入るための手続きも進む。先進医療に採択されると保険適用の道が開かれるため「より多くの方に使っていただける環境作り」にも力を入れる。

 子宮内フローラ検査は国内ではバリノスのみ、海外でも数社しか提供していない。バリノスが世界初の検査を提供できた理由は、どこにあるのか─。

 まず1つはスピード。論文で子宮内に菌が存在することが発表されると、すぐに開発に着手。

 また、微量しか存在しない子宮内の菌を解析するには、高度な技術力と高性能なシーケンサーが必要。桜庭氏ともう1人の共同創業者は、次世代シーケンサーメーカーの米イルミナ出身。

「ゲノムの仕組みを知り尽くし、真剣に考えてきたメンバーで作った会社。そこに、日本でも数少ない次世代シーケンサーを使って解析できるメンバーが集まり、0から1を作り出すことができた」(桜庭氏)

 正確な検査結果を出すため機械が読み取りやすいよう検体を前処理したり、DNA配列を読み込む専門のプログラムを組むなど、様々な技術とノウハウで世界初の検査を作っていった。

 先端技術を受け入れる土壌があった生殖医療から事業を始めたが、子宮内フローラが子宮内膜症や子宮頸がんなど婦人科系疾患と関係があることもわかってきたため「大学との共同研究も進めていきたい」と語る。

 また、ゲノム解析の応用範囲は広い。「遺伝病、がんでも新しい検査を作っていく計画」だ。

 日本は世界2位の医療機器市場だが、診断機器分野の競争力はあるものの、治療機器分野では1兆円近い貿易赤字(18年度)。バイオ・ゲノム領域でも後れを取るわけにはいかない。

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