2022-06-29

みずほ銀行頭取・加藤勝彦の「現場行脚」「お客様を知るために行動して欲しい」

加藤勝彦・みずほ銀行頭取



デジタルツールを強化し顧客の利便性を確保


 時代の変化という意味では今、デジタル抜きには金融を語れない。みずほ銀行では、この流れを受けて19年3月から「QRコード」を活用したスマホ決済サービス「J-Coin Pay」(ジェイ コイン ペイ)を開始。当初は「銀行系デジタル通貨のプラットフォーム」という位置づけだった。

 この時、みずほには強い危機感があった。サービス開始時に、当時のみずほFG社長・坂井氏は「今や、決済分野は金融機関がサービスを提供するものという常識が崩れており、銀行の『土管化』、存在意義低下という声も聞かれる」と話していた。相次ぐ金融業界へのITプラットフォーマーの参入、「黒船」到来への備えという意味合いも強かった。

 ただ、現在では少し、様相が違ってきているようだ。「今、ITプラットフォーマーと我々とは棲み分けができたのではないかと見ている。みずほが自らプラットフォーマーになるのではなく、彼らと組んで進めるのが、大きなDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略」

 実際、その後みずほはLINEとの間で「LINEクレジット」、「LINE Bank」(設立準備中)、ソフトバンクとの間で「PayPay証券」を展開。さらにはグーグルとDX分野における戦略的提携を決めている。

 一方で、自前のデジタルツールの強化も進めてきた。システム障害以前、インターネットバンキングのアプリ「みずほダイレクト」のユーザーからの評価は低迷していた。それが22年に入ってリニューアルしたところ、アップルのアプリストアでの評価が4.3にまで高まり、他2メガと遜色ない水準になった。21年度の「グッドデザイン賞」も受賞。

 みずほダイレクトをリニューアルした後、取引が25%増加したが、今後2年間で1.5倍にするという目標を持つ。「お客様のニーズは常に変化する。これにとどまることなく、海外送金機能の追加や、他社と組んでPFM(Personal Financial Management=個人資産管理)とリンクするといったことも検討していきたい」

「J-Coin Pay」の機能拡充も進める。業界では、この秋にも3メガバンクとりそな銀行、埼玉りそな銀行が参加したスマホ向け少額送金サービス「ことら」がスタートする予定。5行の他、約30行の地方銀行の参加が決まっている。

 先々は「Jデビット」に参加する地銀や信用金庫など約1300の金融機関に参加を呼びかけ、銀行発のスマホ送金サービスとして普及させる構想。

 みずほ銀行は、この「ことら」とJ-Coin Payを接続。これによって利便性を高め、ことらに入っている口座と双方向で送金が可能になる。手数料は「金額に上限はあるが、無料にする予定」(加藤氏)

 三菱UFJ銀行、三井住友銀行が自行のアプリではなく、日本電子決済推進機構が提供する業界横断の決済アプリ「Bank Pay」を利用しているのに対し、みずほ銀行は自前のアプリの利便性を高め、自行の顧客にアピールする。

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