2022-06-29

みずほ銀行頭取・加藤勝彦の「現場行脚」「お客様を知るために行動して欲しい」

加藤勝彦・みずほ銀行頭取



銀行の役割はどうなる?


 さらに、J-Coin Payは個人だけでなく法人向けサービスも展開。22年6月8日には、企業や自治体が提供するサービスに直接組み込みが可能なチャージ型コインサービス「ハウスコイン」を発表した。

 その企業の自社店舗などに限定して利用が可能な独自コインを決済手段として、企業のスマホアプリに搭載できる。この仕組の土台となるのがJ-Coin Payの決済基盤。

 現在、大手企業や自治体などとハウスコイン導入の検討を進めており、22年度内に複数の企業にサービス導入、23年度には年間数百億円の決済を目指す。

「例えば、企業であれば従業員への給与支払い、自治体であれば給付金の交付を、この仕組みで行えるようになる。これらはITプラットフォーマーの手が入っていない領域であり、これらを自社サービスで実現できるのはみずほだけ」

 近年、みずほを始め、各銀行はコストがかかる店舗やATM(現金自動預払機)の削減を進め、顧客をデジタルツールにシフトさせようとしている。この時に、利便性をいかに確保するかが大きな課題。「店舗からATMにシフトした際にも同様の議論があった。新たなツールになじまないお客様がおられることも事実なので、そうした方はしっかりお支えしていく」

 その意味で、デジタル化など大きく環境が変化する中で、これからの時代の銀行の役割はどうなっていくのか?

「マネーロンダリング対策、お客様の情報管理など、規制もあってしっかりしたものになっており、DX時代にあっても銀行の存在感は依然として高いものがあると考えている。加えてコロナ禍のような危機でも、ファイナンスという手法では銀行の役割はあったと思う。形は変わっていくし、銀行だけでサポートする形ではなくなっていくかもしれないが、私は日本を支える重要なインフラであり続けると思っている」

 デジタル時代に向けて自らを変化させているが、日本独特の低金利下で銀行としていかに役割を果たしていくか。時代の変化という意味では、加藤氏が社会人になった1988年の預金金利は7%。当時は預金金利で多くの収益が得られたが、足元では0.001%。

 低金利下が進む中、各銀行グループは預金金利に頼らない事業に取り組むことが求められた。投資信託など証券関連商品を証券で提供、さらに資産の次世代への継承に向けて信託の機能を提供してきた。つまり、銀行だけではカバーできない領域にはグループ力で対応するという形に変わった。今後、この総合力をさらに高めていくことが求められる。

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