2022-07-19

【日本製鉄・JFE・神戸製鋼】日本の「水素製鉄」は最先端を行くか?鉄鋼大手3社が「呉越同舟」で開発

「COURSE50」試験高炉設備の外観。日本の水素活用製鉄法の先駆けだ(写真提供:NEDO・日本鉄鋼連盟)

「脱炭素」の流れの中で、世界で新たな鉄法の技術開発競争が始まっている。最大のポイントは「水素」をいかに活用するか。CO2を発生しない水素だけに、活用できれば脱炭素に近づくが、製鉄に必要な「熱」が足りなくなるため、そこをどう克服するかが技術開発のカギを握る。欧州では小規模ながら、水素製鉄による製品の出荷が始まる中、日本勢はどう対抗していくのか。

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鉄鋼業のCO2排出は国全体の15%


 製鉄業界は、本当にCO2を減らすことができるのか─。

 2050年のカーボンニュートラル(脱炭素)は国家的課題だが、その中で鉄鋼に課せられた課題は重い。環境省のデータによると、日本のCO2排出約10億3000万トン(19年度)のうち、産業分野が占める割合は37%で、鉄鋼はその15%(1億5000万トン)を占め、最も多いからだ。

 すでに業界として2030年に13年度比30%のCO2削減と、2050年の脱炭素という目標を打ち出しているが、達成に向けては、従来とは大きく違う製鉄法の確立が不可欠。

 現在、最も有力な切り札とされているのは「水素」の活用だが、これに向けて、本来であればライバルの鉄鋼メーカーが手を組むことになった。

 日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所という高炉3社と金属系材料研究開発センターがコンソーシアムを結成し、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の公募による基金事業に採択され、取り組みを推進している。

「CO2削減に向けた1つのチャレンジは水素による還元」と話すのは、日本製鉄フェロー先端技術研究所長の野村誠治氏。

 製鉄プロセスでは、原料である鉄鉱石の主要成分・酸化鉄から酸素を取り除く、つまり「還元する」ことで鉄をつくる。この還元に必要なのが炭素で、これには石炭由来のコークスが使われる。

 鉄鉱石を焼き固めた焼結鋼とコークスを高炉に入れるが、還元で除去された酸素は炭素と結びついてCO2となる。実は、前述の鉄鋼業界が排出するCO2のうち約8割が、この還元の段階で発生しているのだ。「鉄鋼のカーボンニュートラル実現には、鉄鉱石還元プロセスのCO2削減が重要」(野村氏)

 1つの方策が、還元剤として炭素(コークス)ではなく水素を活用すること。だが、ここで大きなハードルとなるのが、炭素による還元が「発熱反応」なのに対し、水素による還元が「吸熱反応」となってしまうこと。

 従来は還元時に発熱することで鉄鉱石を溶融していたが、水素では温度が下がり難しい。ここで加熱した水素を大量に吹き込むという必要があるが、爆発のリスクも出てくる。その安全確保のための新たな技術開発が必要となる。

 この高いハードルを超えるには、1社では時間も資金もかかるということで、高炉3社で人、技術、知恵を持ち寄り、役割分担をすることで、開発スピードを速めようという狙いがある。さらに前述のように、国による補助制度「グリーンイノベーション基金」(2030年度までに総計1935億円の支援)も活用。

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