技術開発には段階がある。まずは、高炉法の還元剤にコークスだけでなく水素を活用してCO2を減らすと同時に、その発生したCO2にはCCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)の技術を活用する。CO2削減とCCUSを最大限に活用することで、50%以上削減できる可能性がある。この新たな高炉法は日本製鉄が東日本製鉄所君津地区で実験中。
他にも、JFEスチールは高炉から出たCO2をメタンに変換して、それを還元剤として再利用するという「カーボンリサイクル高炉」の開発を進めている。こちらも、CO2排出を50%以上削減する技術を実証。
それ以外にも、水素だけを使って低品位の鉄鉱石を還元する「直接水素還元技術」を使って、大型電炉で製造するという開発も進む。これは電炉で使うスクラップに含まれる不純物を除去する技術を同時開発しなければならないが、CO2削減に向けた有力技術とされている。
だが、こうした技術の実現には前述の「CCUS」技術の確立や、「安い電力」の確保など外部の力も不可欠。「鉄鋼業だけでは難しい。サプライチェーンとも連携する必要がある」(JFEスチール技術企画部長の渡辺隆志氏)
この取り組みの背景には、世界の鉄鋼メーカーとの競争もある。まず、カーボンニュートラルに電炉が有効と見て、アルセロール・ミタルや、中国の河鋼集団などといった海外の大手が電炉の技術開発と同時に、鉄スクラップの確保に躍起になっている。原料の奪い合いが始まっているのだ。
さらに、スウェーデンの鉄鋼メーカー・SSABが水素還元製鉄の技術を確立したと発表。21年には同国の自動車メーカー・ボルボ向けに出荷したとしている。
日本勢はまだ実証炉止まりで、実機がないという点で出遅れたように見えるが、「まさに競争している最中。我々の技術は十分に戦える」(日本製鉄の野村氏)として、この高炉3社の取り組みで巻き返しを図る考え。
「海外との競争にはスピード感が求められる。加速するためにもオールジャパンでやることに意味がある」(JFEスチールの渡辺氏)
時に大掛かりな国の支援も受けながら技術開発や原料確保に動く諸外国に技術で対抗するには、国内大手の「呉越同舟」とも言える取り組みを成功させるしかないが、残された時間は決して多くない。