2022-07-12

【日本取引所グループCEO・清田瞭】の日本企業の稼ぐ力をもっと!

日本取引所グループ CEO 清田 瞭氏

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日本全体の生産性をいかに上げていくか

 人口減、少子化・高齢化で需要も減少し続ける日本。国内、海外と分ければ、成長する海外への投資に資金は向かう。
 今、年間、純利益が1兆円近くになった総合商社。グローバルに稼ぐ力を発揮している。
「今、われわれの利益のほとんどが海外で展開する事業から生まれている」(某大手商社の首脳)という実情。

 資源・エネルギー価格の高騰ということも商社の高収益の背景にあるが、その事業構想力、金融力、そしてグローバルに働ける人的資源と、まさに総合力を発揮しての稼ぐ力である。
 一方で、国内主体の中小企業の大半は、縮小し続ける国内市場になった今、収益力が低下。明暗を分ける構図である。

 日本生産性本部会長を務め、『令和臨調』(今年6月19日発足)の代表世話人を務める茂木友三郎氏(キッコーマン名誉会長)は、「日本の生産性向上のカギを握るのはサービス産業」と指摘し、次のように語る。
「日本の生産性は製造業で米国の7割、サービス業は半分。特に卸売、小売、宿泊、飲食業は米国の4割の水準」

 では、どう対処するか?
「事業の付加価値を高める努力。そして需要創造のための工夫。日本は価格競争が激しくて、せっかく自分が創った付加価値を棄損させている」という茂木氏の指摘。

 また、規制改革の面で、日本の生産性引き上げを提唱し、行動してきたオリックス・シニア・チェアマンの宮内義彦氏。宮内氏は日本の生産性の低さを、「行政だけでなく、大企業の官僚化にある」と指摘。旧来の秩序、慣習にとらわれず、各企業、各人がもっと自主的に創造的に活動していけるようなインフラづくりが必要と訴える。

 環境変化は激しい。コロナ禍に加えてウクライナ問題は、改めて国とは何か、企業経営の要諦、そして個人の生き方を問い直している。

〝外部の目〟をどう認識し、行動するか

「日本企業の経営者の意識改革をもたらすとしたら、やはり外部の目が必要になる」という基本認識を清田氏は示す。
 産業界では以前、投資のリターンが1、2%、良くて3%ぐらいしかない〝政策保有株〟が多かった。
 経営の安定を保つという大義名分での政策株保有だったが、これは経営者の自己保身なのではないかという見方が強い。

 自己資本の3割位は政策保有株で占めるという企業も数多くあった。もっと外の目、つまり株主の目を意識し、緊張感を持って経営に当たろうという気運が盛り上がってきた。
 バブル崩壊(1990年代初め)から約30年。この間、世界は『ベルリンの壁崩壊』(1989)に続き、旧ソ連邦崩壊(1991)、そしてEU(欧州連合)の結成(1993)と、一気に旧来の秩序が崩れ、新しい力が台頭した。
 中国はこの間に経済力を高め、世界第2位の経済大国となり、軍事力も付け、今や米中対立と呼ばれる時代に突入。そこにコロナ禍、ウクライナ危機という今日的命題が突き刺さる。

 そうした環境変化の中を企業は生き抜かなくてはならない。

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本誌主幹 村田博文

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