2022-07-21

【水素、医薬でも注目】千代田化工会長兼社長・榊田雅和はいかに新領域を開拓するか?

榊田雅和・千代田化工建設会長兼社長

「予期し得ぬことが起きるのだということを実感している」と話すのは千代田化工建設会長兼社長の榊田雅和氏。足元で様々なリスクが頻発しているが、エネルギー開発に携わる千代田化工としては、こうしたリスクをいかに抑えるかが重要課題で「戦略・リスク統合本部」でリスク管理を徹底。また、新たな柱として「水素」、「ライフサイエンス」を掲げる。いずれも生活に欠かせない基礎事業。榊田氏のカジ取りは─。

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様々なリスクをいかに最小化するか?


「ロシアによるウクライナ侵攻は、我々にとっても重要な出来事」と話すのは、千代田化工建設会長兼社長の榊田雅和氏。

 産ガス国・ロシアの行動は、世界のエネルギー情勢に深刻な影響をもたらしている。特に欧州はロシアからのガスパイプラインからのLNG(液化天然ガス)を削減していく方針だが、当然調達先の多様化が必要。そのため欧州各国はロシア以外の産ガス国に供給を要請中。

 そうなると、産ガス国は需要があるということで増産のための設備拡張を検討することになり、「我々に対して既存設備の拡張や、設備の新設のご相談がかなり来ている」(榊田氏)。

 ただ、拡張にしても新設にしても、すぐにできるものではなく5、6年の時間がかかる。その間に、地政学リスクが減退すると、一転して設備過剰になるだけに、産ガス国としても最終投資判断は難しい。

 エンジニアリング会社の立場としても、足元の需要が旺盛だからと拙速に受注に走るわけにもいかない環境にある。

 千代田化工が事業上、最も強い関係を結んでいる国が、世界第5位の産ガス国であるカタール。「カタールには、まだまだ埋蔵量があり、設備の拡張スペースがある。そして何と言ってもコストが安いだけに、今後も拡張余地のある国」

 千代田化工は2021年2月、カタールの国営石油会社から、年産3200万トンという世界最大のLNGプラントの設計・建設業務を受注した。早くも、このプラントの拡張に向けた検討も始まっているという。

「ウクライナ危機が起きた後も、世界全体のLNG需要が急増したわけではない」と榊田氏。ロシアが生産したガスは中国などが購入し、中国向けに出荷していた産ガス国が欧州に振り向け先を変える、といった形で〝調整〟が入っているのだ。

 地政学リスクがある中だが、「今回のコロナ禍、そしてウクライナ情勢を見ても、予期し得ぬことが起きるということを実感している。物価が上がって資機材価格が高騰し、エネルギー価格が上がって輸送費も高騰している。我々としては、どうやってこれらのリスクを最小化することが喫緊の課題」。

 エンジニアリングの契約は、大きく「ランプサム」と「コストプラスフィー」がある。コストプラスフィーが文字通り、コストに利益を上乗せするのに対し、ランプサムは金額を固定して発注。発注側は金額を確定でき、エンジニアリング会社はコストを削減できれば利益を上積みできるが、管理がうまくいかなければ資材費、人件費などが変動するリスクもある。

 業界ではランプサムが主流だが、千代田化工もこの契約形態で痛手を被ってきただけに、メインの契約はランプサムでも、不測の事態が起きた時のコスト負担など、契約書の中で細かく取り決めるといった契約上のリスク管理も重要になる。パンデミック、戦争まで念頭に置いた経営が必要になるということ。

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