3領域経営の本質は? そもそも、3領域経営の本質とは何か?
工藤氏に社長の座をバトンタッチした前社長・小堀秀毅氏(現会長、1955年生まれ、2016年4月から2022年4月まで社長在任)は社長在任中、3領域経営について、次のように語っていた。
「たとえ、柱が1本でも幹が太ければ倒れない。2本でも前や横を補強することでやっていけますが、柱が3本あれば、間違いなく安定感が強まります。1つひとつの柱を太くしながら、高くしていくことが大事」
マテリアル、住宅、ヘルスケアのそれぞれの専業メーカーと比べて、そのメリットや長所はどこにあるのか?
「専業のメーカーさんと比べて、3つの領域によるマネジメントのあり方、知見や視点、リスク管理などで工夫し、それをグループ全体に反映させていく。そのことでマネジメントチームとしての無形資産のノウハウを高めてもいけます」(小堀氏)ということである。
要は、3領域経営のメリットを発揮する方向に持っていくことが大事ということ。その意味で、小堀氏から社長のバトンを受けた工藤氏の舵取りに注目が集まる。
アニマルスピリットと旭化成魂で! 経営のカタチに完成形はない。時代の環境変化や新しいテクノロジー(技術)の登場などで、経営のカタチは絶えず変革していかなくてはならない宿命にある。
コロナ禍に加えて、ウクライナ危機が起き、資源・エネルギー価格も上昇する中、2022年3月期決算を振り返ると─。
同期の売上高は約2兆4613億円で前期比16.9%増、営業利益は2026億円強で同17.9%増、経常利益は2120億円で同19.1%増と増収増益となった。
コロナ禍初年度となった2021年3月期が売上高で減収(前期比2.1%減)、減益(営業利益で3.1%減益)になったのとは対照的に、2022年3月期は増収増益となった。
そういう中で、カブトの緒を締めることの大事さ。「少しゆっくり感が出ているのじゃないか」という社長・工藤氏の危機感であり、「もう一度、挑戦し続けてきた歴史を呼び起こそうとしていきたい」という思いである。
工藤氏が続ける。
「旭化成スピリットのAと、アニマルスピリットのAを掛けて、Aスピリット。もともと旭
化成魂があるし、それを踏まえて、アニマルを掛けて、さらに挑戦していこうと。そのために社員を鼓舞し、覚醒させる、そういうスピリットを一番意識したのが今回の新中期経営計画です」
工藤氏は、〝Aスピリット〟という言葉を掲げて、社内のモラールアップ(士気昂揚)を図ろうとする。
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