2022-08-10

≪防じん・防毒マスクメーカー》コロナ禍の役割とは? 『興研』会長・酒井眞一郎



 ―― 最低限の数量となると、どれくらいの量になりますか。

 酒井 例えば、1千個必要だというところもあれば、1万個だとか、4万個ほしいという病院もありました。そういう病院を一つひとつ確認して、200個なら対応できるとか、400個ならできるとか、最大でも1千個くらいでしたかね。最低限必要な量を分散して送りました。

 ―― それを興研の社員が送り届けるわけですか。

 酒井 いや、あの頃は病院に来るなと言われていましたので、われわれが直接運ぶのではなく、病院と連絡が取れる商社さんを通じてお送りしていました。これは今でもやっています。

 そういう状態でしたから、20年4月に、当時の安倍晋三首相が緊急対策としてメーカーに集まってもらい、マスクの増産を要請したんです。当社の村川(勉・社長)もオンライン会談に参加して、増産しましょうということで、増産体制をすぐにとりました。

 ただ、一気に24時間体制にすると言っても簡単にはできません。普通は作業員や管理者双方が戸惑いますよね。ところが、たまたま2009年に新型インフルエンザが大流行した後で、当時の所長が有事が起こった時に対応するにはどうしたらいいかということで、別の部署にいた技術屋をマスク製造の現場に2~3カ月異動させて、管理の仕事を覚えさせたりしていたんです。

 ―― 危機時への備えができていたと。

 酒井 ですから、そういう人材がいたということで、すぐに24時間体制に切り換えられたわけではありませんが、1カ月もしないうちに体制が整ったということはありました。

 ―― 危機時に頼りになるというか、伸びる社員というのは、どういうタイプの人ですか。

 酒井 人間は皆、伸びるんですよね。伸びない人もたまにはいますが、企業というのは、日常的に社員が伸びる訓練をする体制をつくっておくことが大事なんです。

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