2022-08-11

生命保険協会会長・稲垣精二氏に直撃!先行き不透明の中、生命保険会社が果たすべき役割は?

稲垣精二・生命保険協会長(第一生命保険社長)



デジタルと「人」の融合を


 ─ 人と人とのつながりを感じさせる話ですね。一方、コロナ禍では改めて、日本はデジタル化の後れが課題であることが浮き彫りになりました。デジタルと人の融合はどう進めますか。

 稲垣 デジタル化の後れは、我々も課題として認識していました。今回の政府の「骨太の方針」でも、かなりデジタル化が組み込まれました。

 具体的には、「マイナンバーカード」、「マイナポータル」と、我々の事業とを連動したサービスのご提供ができないか調査・研究を行いたいと思っています。マイナポータルの活用により、健康診断のデータなどを利用することが可能となっていますから、お客様のご了解を得た上で、それを我々に開放していただくことで、お客様の利便性向上に活用できるのではないかと考えています。

 住所変更なども、実は各社が全てお客様と相対でやり取りをさせていただいていますが、「転居先不明」といったケースでは、専門家に依頼して追跡するなど、時間とコストがかかっています。ここにマイナンバーカードの機能の活用により住所情報等の行政データが連携されることで、結果的にお客様の利便性向上につながると思います。この1年、協会として意見発信をしていきたいと思っています。

 ─ 2000年以降に成人した「ミレニアル世代」が生産年齢人口の半分を占めようかという時代ですが、こうした世代に浸透するためにもデジタルは重要ですね。

 稲垣 ええ「デジタルネイティブ」と言われている方々ですが、職場にお邪魔したり、ご自宅にお伺いしてお会いするのも難しく、いかにデジタル空間で接点を持っていくのかというのは、業界全体の大きな課題です。特にこのコロナ禍で、この課題がよりフォーカスされたのではないかと思っています。

 ─ どういったアプローチが有効だと。

 稲垣 デジタル空間上に保険商品を並べて、お客様にご自分に合ったものを選んでいただくというのは、諸外国の事例を見ていても難しい。

 ですから、デジタル空間上で比較検討をされると同時に、そこに人によるアドバイスが必要ではないかと。これは対面でなくとも、ウェブのミーティングやお電話でもいいのですが、最後は「人」と「人」とのコミュニケーションによってご決断いただくという部分は、やはり残るのではないかと思っています。ですからデジタルと人の融合は大切になります。

 ─ 各社が営業チャネルとして重視してきた営業職員は増やす方向なのか、それとも効率化に向かうんでしょうか。

 稲垣 これは個社の話ですが、第一生命としてはただ営業職員の数を増やすことだけにこだわるのではなく、お客様とできるだけ長く寄り添える人材を数多くつくりたいと思っています。

 ですから採用では数を追うことはやめて、お客様に寄り添える方に厳選して第一生命グループに入っていただく。

 そして我々の新制度では5年間、安定的な給与体系の中で時間をかけて様々なことを勉強していただき、できるだけ長く仕事をしていただくということにベクトルを合わせにいっています。それが結果的にお客様からご支持、信頼していただける営業職員への成長につながると考えています。

 ─ 「人」の要素はこれからも重要だということですね。

 稲垣 そうです。やはりお客様とお話することでニーズの変化や、困り事を掴むことができます。また、姿を拝見して怪我をされていた時に「給付金が出ますよ」といった請求勧奨にもつながります。対面の情報量は、デジタルの一方向の情報量とは大きく違うと感じます。そうしたつながりこそが、我々のビジネスにとって大事だと思います。

 ─ きめ細かさや優しさというのも、営業において重要な要素になりそうです。

 稲垣 はい。営業職員による丁寧な寄り添い、きめ細かなサービスはできているのではないかと思います。そして、人がやる仕事も、デジタルと融合することで生産性と効率性を上げていけるのではないかと考えています。

 それによってお客様の利用コストを下げていくというのは、今後も進めていかなくてはいけません。

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