2022-08-23

【東宝・松岡宏泰新社長が登場】演劇・映画・不動産に次ぐ「第4の柱」にアニメ事業を据えた理由とは?

東宝・松岡宏泰社長

まつおか・ひろやす
1966年イタリア・ローマ市生まれ。89年慶應義塾大学法学部卒業。91年米オルブライト大学経営学科、92年7月米ピッツバーグ大学経営大学院を卒業し、10月米国のインターナショナル・クリエイティブ・マネジメント社に入社。94年東宝東和に入社し、98年取締役、2001年常務取締役、08年代表取締役社長、15年代表取締役会長。14年東宝取締役、18年常務取締役、21年取締役常務執行役員などを経て22年5月26日から現職。父方の曽祖父は阪急東宝グループの創業者・小林一三氏。元プロテニスプレーヤーでスポーツリポーターの松岡修造氏の実兄。

会社創立90周年で社長就任

 ―― 会社創立90年という節目での社長就任となりました。まずは抱負を聞かせてください。

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 松岡 当社は創業者の小林一三が興し、紆余曲折を経て今に至ります。結果として当社は現在大変良いポジションにいるのではないかなと思います。経営を率いてきた島谷能成会長(前社長)を中心に、全社員が一生懸命やって東宝はこのポジションにいます。これを絶対忘れないようにしたいと思っています。

 その意味では、私の仕事は次の世代に良い形でバトンタッチをすることです。私はそのためのチームリーダーなので、目の前のことだけではなく、先々のことを考えながら仕事をしていきたいと。社長就任に当たり、自分なりに考え、自分の役割とはそういうものだと思いました。

 ―― 紆余曲折という点では、1946年から48年にかけて発生した労働争議もありました。

 松岡 ええ。「東宝争議」とも言われました。他にも映画業界の斜陽化に伴い、製作機能を分離したりしました。決して最初からナンバーワンの会社だったわけではありません。諸先輩方が徐々に徐々に、いろいろなことを積み重ねて今の地位になったということです。

 ―― そういった歴史を踏まえて、2025年までの3年で1100億円程度の投資を実施することを表明しましたね。

 松岡 はい。当社は今年4月に発表した「中期経営計画2025」と32年の創立100周年に向けた「長期ビジョン2032」からなる「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」を策定しています。

 この経営戦略を策定する際、議論したのが10年先の会社創立100周年のときに東宝はどういう会社でありたいかということでした。将来からバックキャストで考えると、いまやらなければならないことがあるはずだと。そう考えたときに、この3年間は10年後のことを考えて積極的に投資をしていこうということになったのです。

 1100億円というのは成長投資の金額で、最低でもこれぐらいを使って成長するための土台を作ろうというのが基本です。使い切らなければいけないわけでもないし、もっといいものがあったら額を超えるかもしれません。そして我々があまり得意としていなかったM&Aについても別枠で考えようということで議論しています。

 ―― 社会との関係で言えば、東宝はどんな価値を提供する会社だと言えますか。

 松岡 東宝は人々に夢や希望というものを、娯楽を通じてご提供する会社だと思っています。これは100年後も変えなくていいだろうと。これこそ我々のパーパスだと思っています。

 小林一三の創業の理念である「健全な娯楽を広く大衆に提供すること」は我々の使命でもあります。ただそれを現代風の考え方などを織り交ぜていきながら、世界の皆様にご提供するべきではないかと思っています。

 その新しい時代のテーマは「Entertainment for YOU 世界中のお客様に 感動を」です。この「YOU」とはまさに当時の大衆であり、今の顧客です。当初は「YOU」ではなく「EVERYONE」という言葉を使おうという声もあったのですが、「YOU」は二人称単数でもあり、複数でもあると。これからは多様性の時代だから、一人ひとりに呼びかけつつ、全員にも訴える。この両方を横断しているYOUを使おうとなりました。

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