2022-08-24

「今は好調だが…」商社決算にみる世界経済の減速懸念

「四半期ベースで過去最高益となった。変化の激しい事業環境に対応し、力強い決算となった」

 こう語るのは、三菱商事常務執行役員CFO(最高財務責任者)の野内雄三氏。

 首位・三菱商事の2022年度第1四半期決算は純利益が5340億円(前年同期比約2・8倍)となり、過去最高益を大幅に更新した。資源価格高騰によって豪州原料炭事業が好調だった他、自動車関連や欧州総合エネルギー、不動産開発などの事業も好調に推移した。

 2位の三井物産も第1四半期の純利益は2750億円(同44%増)で最高益を更新。原料・素材などのトレーディングや北米自動車、ヘルスケアなどの事業が好調で、「安定供給を支えるトレーディング機能とグローバルに広がりを持つ多様な事業ポートフォリオにより力強い収益力を維持することができた」(常務CFOの重田哲也氏)。

 ただ、各社とも23年3月期の通期業績見通しは据え置いた。三菱商事の純利益は8500億円(前年同期比9・3%減)、三井物産は8000億円(同12・5%減)、3位の伊藤忠商事は7000億円(同14・7%減)と、従来計画を変えていない。

 世界中でビジネスを行う総合商社は、景気の影響を受けやすい。ロシアによるウクライナ侵攻や新型コロナの長期化に加え、インフレに伴う各国の金融引き締めやこれらに起因する景気減速を懸念しているためで、「第2四半期以降は厳しい事業環境になることが想定され、不透明さが増している状況を見極める必要がある」(野内氏)。

 また、ロシアの石油・天然ガス開発事業「サハリン1」「サハリン2」のリスクが高まっているとして、今回、三菱商事や三井物産、丸紅が資産価値を2千億円以上減額した。ロシア政府は「サハリン2」をめぐって新たな運営会社を設立。三菱商事や三井物産は新会社に参画するか、対応を迫られている。

 現段階では、各社とも「日本のエネルギー安定供給の重要性を認識しつつ、引き続き日本政府、事業パートナーと協議して、しっかり対応していきたい」(重田氏)と述べるに留めた。

 好業績の中にも緊張感漂う商社業界である。

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