2021-01-19

【菅下清廣の「株価はどう動く?」】2021年の投資テーマは「デジタル」と「グリーン」

2020年は「バリュー株」が振るわず


 新型コロナウイルスの感染が続いていますから、日米ともに今後も金融緩和、財政出動を続けることになりますから、これは株高要因です。しかし、その一方で経済の実体悪とは〝綱引き状態〟になっています。

 今のところ金融緩和、財政出動といった景気対策の方が優勢で株価が上がり、ニューヨークダウ、ナスダック、日経平均が全て直近新高値を付けている状況です。

 しかし2020年12月末にかけて、日本の株の足取りの上値が重くなりました。20年12月18日付の日本経済新聞に「バリュー株、市場そっぽ」という記事が掲載されましたが、20年はバリュー株が軒並み振るいませんでした。

 日本の機関投資家、投資信託のポートフォリオの主役はバリュー株のため、全く利益が上がっていません。ですから一部、中小型ファンド、新興株ファンドで組み入れていた銘柄だけがパフォーマンスを上げており、これを〝年末調整〟で売ってきたことで、上値が重くなったというわけです。ですから、デジタル関連株式で高値圏にあった銘柄に、ファンドから相当の売りが出ています。

 今まで、日本の株式市場を牽引してきたのは、マザーズを始めとする新興成長株で、パフォーマンスがいいのがこの分野しかないため、戻り売りがかなりあるのです。

 米国もナスダック牽引型の相場が続いていたのですが、年末手仕舞い売りなどもあって、頭打ちになっています。

株式市場には「新たな主役」が必要


 また、日経平均の2万7000円直前(2020年12月)という水準には高値警戒感がある上に、前述のように、市場を引っ張ってきた新興成長銘柄にはかなりの利益確定売りが大手の機関投資家から出ており、それに対して個人が買い向かっています。ですから、個人の新興株の買いの信用残がかなり増えており、これが上値を重くしています。

 21年1月20日の米バイデン大統領就任式後、日米の株価が果たして動き出すのかどうか。マザーズ市場は10月14日に1368ポイントと、当面の高値を付けており、日経平均の12月21日高値に対し2カ月先行するなど、市場は株高を織り込んだ形になっています。

 ですから日柄調整に入る可能性があります。マザーズが10月14日天井ですから「3月またがり60日」の法則でいうと、本当は12月末にかけて上がらなければなりませんが、そういう動きにはなっておらず、3カ月の調整になる可能性が高い。

 新興株は1月中旬までモタモタし、底入れした後に業績の裏付けのある銘柄から出てくる、あるいは20年に高値を付けた銘柄は小休止で、新たな銘柄が出てこなければマザーズの調整は長引くことになります。

 なので、この後、相場全体を引っ張るような主役株、リーディングストックが出てこないと、当面は日柄調整に入ります。20年3月19日にコロナショックを受けて1万6358円で底入れした後、下げ過ぎの反動高で6月9日の2万3185円まで上昇した後、5カ月揉み合いました。この後、同じような数カ月単位の調整が起こる可能性があるのです。

 金融緩和と景気対策を織り込んだ株高が、当面はピークアウトし、20年末から21年3月期決算までは機関投資家の〝年末調整〟、〝決算調整〟によって株価は上値の重い展開になる可能性があり、この間は個別物色相場となります。この相場の中で、早ければ1月14日以降、マザーズ銘柄の中から人気化するものが出てくると見ますが、それは20年に上昇した銘柄ではありません。

 日経平均は2万7000円手前、マザーズ指数は1400ポイント手前で株高を織り込んだので、次の上昇相場がやってくるためには新しいテーマと主役が必要なのです。

2021年は前半買い、後半売り


 では、21年にどのようなテーマに期待するかというと、菅義偉首相が会見で触れたように「グリーンとデジタルが成長の源泉」です。デジタルは20年に活躍した銘柄に代わる主役が期待されます。グリーンは新たなテーマとなりますが、その中身は環境、資源関連、中でもEV(電気自動車)関連が注目です。

 ニューデジタルと「日本のテスラを買え」というのが21年の個人投資家の方々に向けた私からのメッセージとなります。

 電池関連企業の株価はすでに上がり始めていますが、現段階ではオールドエコノミーが目立ちます。

 ですから今後期待されるのは、IPO(新規株式公開)銘柄でEV関連事業を手掛けているような企業、環境関連企業の登場を期待しています。例えばレノバ(9519 東証1部)なども1つの候補です。

 21年全体を展望すると、前半は買い、後半は売りと見ています。おそらく日経平均は4月、5月、遅くとも年央までに高値を付けて、後半は要注意です。10月頃に天井を付けて、年末に向けて下落する可能性があるのです。

 それまでに「デジタルバブル相場」が出て、日本の新たなEV関連株も出ているかもしれません。

 21年は、バブル相場が春先から年央にかけて出て、米国でも金利が上昇して、資産インフレ的な動きになり、FRB(米国連邦準備制度理事会)が引き締めを言い出したところで株価は下落することになります。

 18年10月に、日経平均は2万4448円で天井を打った後、年末安につながったのは米国の利上げメッセージでした。これは21年末にかけて再現されて「丑躓く」という相場格言通りになるかもしれませんので、要注意です。

 ただ、足元で下落しているデジタル関連株、IPO銘柄で業績見通しのいいものは絶好の買い場です。個別物色相場の中で人気化する可能性があります、21年年央までが勝負です。

(2020年12月執筆)

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