2022-08-22

【キッコーマン名誉会長 ・茂木友三郎のリーダー論】リスクを取らなければ、新しい価値は生まれない

キッコーマン・茂木友三郎 名誉会長

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資本主義をいかに進化させるか

「ええ、クリントン大統領(1993―2001)の時になって、米経済は良くなった。それで、ベンチャービジネスが生まれたし、そのベンチャーの中からも巨大企業が生まれてきて、GAFAなども登場した」

 その米国経済も万々歳ではない。貧富の差、格差が生まれ、それにどう対応するかという問題意識が出てきた。
 経済人の集まりである『ビジネス・ラウンド・テーブル』が株主優先のための利益追求だけではなく、顧客、従業員、取引先、そして地域社会など全てのステークホルダー(利害関係者)のための経営を追求していこう─という宣言を行った(2019年)。

 このように資本主義は常に改革・改善の道を辿ってきている。
 今、日本でも岸田文雄首相が『新しい資本主義』を標榜。人口減、少子化・高齢化の中で、どう経済を成長させ、国民の所得を向上させていくか、まさに正念場だ。

「日本人はもっと自信を持っていい」

 日本のGDP(国内総生産)が世界に占める比率はピークの1994年には17.9%あった。それが今は5.1%(今年5月時点)に低下。

〝失われた30年〟と縮む話ばかりが出されるが、日本の良さも一方である。もともと日本の経済思想の根幹には、「世のため、人のため」という公(社会)に貢献する思想がある。
 例えば、近江商人の「売り手よし、買い手よし、世間よし」の『三方よし』の考え方もそうだ。これなどは国連が推奨するSDGs(持続性のある開発目標群)や、ESG(環境、社会、ガバナンス)にも通ずる思想と言っていい。茂木氏も、「日本人はもっと自信を持っていいと思います」と語る。

 では、どう動くべきか?
「日本人はバブル経済が終わったあと(1990年代初め)、リスクを取らなくなったんです。もちろん全く取らなくなったわけではなくて、前と比べると、リスクの取り方が少ない。リスクを取らなければ、価値は生まれない。そういう意味で、何とかもう1回、日本人に元気を出してもらわなければいけない」

 茂木氏はこう語り、「今の社長クラスの人たちはバブル時に課長位のポジションで、バブル崩壊も経験して、当時倒産した会社の悲惨さも知っている。だから、あまりリスクを取らなくなっている。これは一般論ですがね」という分析を見せる。

「今の50代、40代の人たちは、バブルの時はまだ若いし、そういう世代がトップになると、少しムードが変わってくると思います」と茂木氏は若い世代に期待を寄せる。
 かと言って、怖いもの知らずでもいけない。リスク管理をきちんとしながら、チャレンジしていくことが大事である。
「米国はやはり敗者復活の世界なんです。日本人は失敗したら、もう押さえ込んでしまう。
そこが問題なんです」
 失敗からの復活を含めて、活力のある日本再構築へ、今がまさに正念場である。

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本誌主幹 村田博文

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