2022-09-17

「経営は人なり」─「人」の知恵でソリューションを!【私の雑記帳】

創刊70周年を迎えて



 本誌『財界』は今年(2022年)8月4日、創刊70年目を迎えた。

 創刊者・三鬼陽之助(1907年=明治40年生まれ)が本誌を興したのは、敗戦後の1953年(昭和28年)夏のことであった。

 それまで東洋経済新報社に籍を置き、石橋湛山社長兼主幹(後の首相)の下で、週刊経済(後の『週刊東洋経済』)の発行に携わった。

『財界』創刊の1953年といえば、日本が敗戦の痛手から立ち直り、サンフランシスコ講和条約発効で再び独立(主権)を取り戻した翌年のこと。

 日本全体が再出発で燃えていた。先の大戦で約300万人が亡くなり、戦争末期には原爆の惨禍にも見舞われた。

 新しい国を創るぞという思いで国民は懸命に生き、働いた。

『財界』創刊時には、言論界から政界に転じていた石橋湛山氏も祝辞を創刊号に寄せてくれている。

『経営は人なり』─。三鬼はこの言葉を信条に、雑誌編集にあたり、自らも直接経営者に取材を行い、『財界』誌を作りあげていった。

『財界四天王』─。小林中(東急、富国生命保険社長などを歴任)、永野重雄(元新日本製鉄=現日本製鉄会長、元日本商工会議所会頭)、櫻田武(元日清紡社長、元日経連=現経団連代表常任幹事)、そして水野成夫(元国策パルプ=現日本製紙社長、元産経新聞社社長)の4氏を指すが、これも三鬼の命名によるものであった。

 リーダー、そして各界の関係者、そして国民一人ひとりが、それこそ懸命に働いて、今日の日本社会の礎をつくってきた。

 主役は「人」である。

価値観の違いの中で…


『財界』誌創刊から70年の間に、世界、そして日本も大きく変貌・変容した。

 日米安保体制がスタートし、我が国は西側(自由主義陣営)の一員として欧米諸国と歩調を合わせてきたし、今後もアジア諸国や豪州など自由圏諸国との連携を図っていくという立場を堅持。

 また、東側陣営(社会主義国)との共存も図ろうと、我が国は1956年(昭和31年)に鳩山一郎内閣が旧ソ連(現ロシア)との間で日ソ共同宣言をまとめ、国際連合にも加盟。

 中国とは1972年(昭和47年)、田中角栄首相が訪中し、日中国交回復を成し遂げた。今年は国交回復50周年という記念すべき年にあたる。

 今は米中対立、経済安全保障、台湾問題などで中国との関係も微妙なものがある。しかし、どんな国も単独では生きていけない。

「中国は、世界なしではやっていけない。世界もまた中国なしではやっていけない」(経団連会長の十倉雅和氏)という認識を基本に、何とか『人』の知恵でソリューションを掘り起こしていきたいものである。

小宮山宏さんの提言


 今号のトップレポートでは、「人は何のために生き、何のために働くのか」というサブタイトルの下、『食料・エネルギーの自給国家づくりへ』と題し、三菱総研理事長・小宮山宏さん(第28代東京大学総長)の『2050年の最大産業は人財養成産業に』を取り上げさせてもらった。

 国力を高めるには、結局は「人」の力を高めることに他ならない。

 小宮山さんは、『人の養成』を進めていくうえでの基本軸として、『知・仁・勇というか、知・情・意が大事ですね』と語り、次のように続けられる。

「これは、わたしが東大総長のとき、よく使わせてもらった言葉ですが、『本質を取らせる知』『他者を感じる力』、そして『先頭に立つ勇気』が大事だと思います」

 人が生きている以上、他者との関係は常に存在し、時に意見が対立し、争い事になることもある。国と国の関係も同じである。

 しかし、諦めることなく、課題解決へ向かい続けていく意志こそが大事。「人」であることの真価が問われている。

再考『国と個人の関係』


 コロナ禍、ウクライナ危機は改めて、国(家)とは何か、ということと同時に、人はどう生きるべきか─という命題をわたしたちに突きつけている。

 コロナ禍が発生して2年半。このパンデミック(世界的流行)となった感染症に対して、各国とも対応に懸命だが、「国家の重要性ということを大変多くの人々が認識するようになった。これはやはりコロナのプラスマイナスがあるわけですけれども、この認識は大きく変わったと思います」と語るのは経済学者の岩井克人さん(神奈川大学特別招聘教授、東京大学名誉教授)。

 岩井さんは、〝国の役割〟について、「わたしたちが高校時代や大学時代に習った社会契約論。その社会契約論を考えての国家の在り方というのが、コロナの蔓延をきっかけとして、もう一回再演というか、再び演じられた」と語り、考察を進める。

 本来、人間は自分で自分を束縛するように努め、自由放任でありたいのだが、それをやると紛争状態になってしまうので、国家が必要と言うのが社会契約論の骨子。

「一度、国家に市民として参加して決めた法律に関しては、今度は各人は国民として、これはルソーなどの翻訳では『臣民(subject)』になっていますが、その臣民として法律に従うと。それで国家を媒介することによって、自分で決めた法律に自分で従うことができることによって、個人は自由を確保できると」

 国と個人の関係の追求である。

「国家を通して、自分たちの自由を制限することによって、自分たちはそれによって初めて自由が確保できる」と岩井さん。

〝個と全体〟、〝権利と義務〟といった根源的なことを考えさせてくれるコロナ禍である。

8月末にオフィス移転


 弊社(財界研究所)はオフィスを千代田区永田町2-14-3の東急不動産赤坂ビルから港区赤坂3-2-12の赤坂ノアビル7階に移転。8月29日(月)から業務を新オフィスで始めている。

 東急不動産赤坂ビルには、1969年(昭和44年)の竣工時からお世話になり、今日まで53年間、わたしたちの活動の拠点とさせていただいた。

 外堀通りと青山通りの交接点にある〝赤坂見附〟は、活動の拠点として申し分のないところ。

 東京メトロの赤坂見附駅からは、丸の内・大手町まで10分、霞が関に5分余で行ける。また、新橋・新宿・渋谷にも各10分、池袋には約15分と都内要所にすぐに駆け付けられるので、編集記者はもちろん、営業企画のスタッフも実に行動しやすい。

 東急不動産赤坂ビルが建て替えられるための引っ越しだが、新住所は外堀通りを隔てて斜め向かい。千代田区と港区の違いはあるが、同じ赤坂見附の住人であることには変わりない。今後ともよろしくお願いします。

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