2022-09-08

『日立』グループ再編は総仕上げ 日立建機の一部売却を完了

東原会長(右)からグループの成長を託された小島社長

日立製作所が、約51%を保有する上場子会社・日立建機の株式の一部売却を完了した。投資ファンドの日本産業パートナーズと伊藤忠商事が26%を引き受け、譲渡額は1824億円。これにより、日立建機は日立の連結子会社から持ち分法適用会社となる――。

 リーマンショック後の2009年3月期に当時、製造業で最大となる7873億円の最終赤字を計上した日立。当時、子会社に転出していた川村隆氏を再建社長として本体に呼び戻し、抜本的な構造改革が始まった。

 川村氏から社長職のバトンを受け継いだ中西宏明氏(前経団連会長)や東原敏昭氏(現会長)といった歴代経営陣は、従来の総花的な経営を改め、事業の選択と集中を開始。ボラティリティ(変動性)の激しい事業は本体から遠ざけ、鉄道や電力システムなどの社会インフラ事業に経営資源を集中した。すでに日立金属は米投資ファンドのベインキャピタルなどに売却することが決まっており、一連のグループ再編は総仕上げとなる。

 4月に開かれた決算説明会で社長の小島啓二氏は「(一連の売却が完了すれば)過去10年の構造改革は一区切りがついた。これからは成長へのモードシフトとなる」と話していた。

 今後の日立の成長の柱となるのが、あらゆるものがインターネットにつながるIoTをベースとした「社会イノベーション事業」。近年は自社のIoT基盤『ルマーダ』を成長のエンジンに位置づけ、ハードからソフトに経営の軸足を移している。

 日立は相乗効果の見込めない事業を切り離す一方、スイス電力大手ABBの電力システム事業を約7000億円で買収したり、米IT大手のグローバルロジックを約1兆円で買収するなど、事業構造を再構築。小島氏にはこれら大型買収の成果をできるだけ早く出す必要がある。

 製造業の強みを生かしつつ、データを駆使した「デジタル製造業」への転換を急ぐ日立だが、世界には独シーメンスや米ゼネラル・エレクトリックなどの巨人が立ちはだかる。小島氏に求められるのは、世界展開の速度といえそうだ。

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