2022-09-13

【次世代太陽電池の本命】積水化学が開発する「ペロブスカイト太陽電池」の将来性

「ペロブスカイト太陽電池」は薄く、印刷するように製造できる

日本発の技術、素材で実現できる太陽電池の登場─。積水化学工業が開発する「ペロブスカイト太陽電池」が、2025年に世界で初めて、JR西日本の駅に設置されることになった。この電池は従来の太陽電池に比べて軽く、薄く、柔らかいために様々な場所に設置が可能。さらに、国産材料だけで製造できるため、経済安全保障上も大きい。開発における課題は─。

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2025年に世界で初めて駅への設置が決まる


 シリコン太陽電池で中国に敗れたと思われた日本の存在が高まる可能性が出てきた─。

「『ペロブスカイト太陽電池』は2025年の製品化ということで実装段階に入ってきた」と話すのは積水化学工業R&Dセンター先進技術研究所次世代技術開発センター長の森田健晴氏。

「ペロブスカイト太陽電池」とは、「灰チタン石」と同じ結晶構造を持つ化学合成材料でできた太陽電池。その特徴は軽く、薄く、柔らかいシート状の形状にできることから、既存のシリコン太陽電池では設置できなかった場所に設置できること。

 また、後述する様々な課題をクリアできれば、シリコン太陽電池よりも安価に、省エネルギーで生産が可能になる他、例えば「レアメタル」を必要としないなど、自国内にある材料で海外に依存せずに生産でき、経済安全保障上もメリットが大きい。

 元々は、2009年に桐蔭横浜大学特任教授の宮坂力氏が元になる論文を発表したことで、英国や日本で研究が進んだ。

 積水化学を始めとする各社の研究で、近年発電効率が飛躍的に向上し、前述の特徴もあって「次世代太陽電池の本命」と期待されている。

 22年8月3日にはJR西日本が、25年の開業を目指す「うめきた(大阪)地下駅」に、積水化学のペロブスカイト太陽電池の設置を発表。JR西日本の調べでは、これが世界初の事例となる。

 JR西日本関係者は「軽くてフレキシブルという特徴がある太陽電池で、設置場所の拡大が期待される。性能を検証していきたい」と話す。

「この太陽電池を実装されたお客様は、まだいない。我々はお客様と一緒になって課題に取り組み、製品として仕上げていく」(森田氏)

 課題解決のハードルはまだ高い。現在、積水化学はペロブスカイト太陽電池を「ロール・ツー・ロール方式」という印刷加工のような形で製造しているが、実装に耐える耐久性は30センチ幅でしか実現していない。「30センチで製造技術を確立し、並行して1メートル幅にするための開発を進める」と森田氏。

 また、現状のペロブスカイト太陽電池は非常に湿度に弱い。通常の空気中で製造すると、出来上がった時には劣化してしまっているというほど。積水化学では屋外に設置する試験も行って、10年相当の耐久性は確認しているが、さらなる向上は必須。

 耐久性や製造時の歩留まり向上は理想とされる発電コスト実現に大きくかかわる。当面はキロワットアワーあたり20円を目標とし、その後はシリコン太陽電池並みの14円の実現を目指す。

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