2022-09-22

【政界】日中国交正常化50年に複雑化する国際情勢 問われる岸田首相の「したたか外交」

イラスト・山田紳



台湾有事は日本有事

 しかし、中国が「断固たる対抗措置をとる」などと警告する中で、米下院議長のペロシが8月2日、台湾の訪問を決行したことをきっかけに、米中関係、日中関係は一気に緊迫する。

 中国は日本に対し、8月4日にカンボジアで予定されていた林と王の日中外相会談を直前にキャンセルするという異例の対抗措置をとった。林を含む主要7カ国(G7)外相が台湾情勢を巡る共同声明を発表したことへの反発だった。

 中国は外交的に態度を硬化させただけでなく、軍事的にも圧力を強めている。中国軍は8月上旬、台湾を取り囲む海空域でミサイル試射を含む大規模な軍事行動を実施した。

 日本の排他的経済水域(EEZ)にも弾道ミサイル5発が落下した。過去に例のなかったことで、「外相会談の〝ドタキャン〟よりも深刻だ」(日中外交筋)との批判が上がった。中国軍の戦闘機は台湾海峡の中間線を越えて台湾空域に入るなど、かつてない緊迫感に包まれている。

 2021年3月、当時の米軍インド太平洋軍司令官のデービッドソンは上院公聴会で、台湾情勢について「2027年までに危機、脅威が明らかになる」と警鐘を鳴らした。ただ、台湾有事はさらに身近に迫っているともいわれる。

 中国共産党は10月16日に第20回党大会を開催する。ここで習の3期目続投が実現すれば、「台湾は中国の不可分の領土」と主張してきた習政権が、ロシアのウクライナ侵略の教訓から短期決戦を企て、一気に軍事侵攻を仕掛ける可能性もある。

 読売新聞の世論調査(9月2~4日実施)では「中国が日本の安全保障上の脅威だと思うか」という問いに、81%の人が「思う」と回答した。NHKの世論調査でも、中国による台湾周辺での軍事演習が日本の安全保障環境に「大いに影響を与える」(40%)と感じており、あ
る程度影響を与える」(42%)も合わせると80%以上の人が危機感を抱いている。

「沖縄・与那国島にしても、鹿児島・与論島にしても、台湾でドンパチ始まることになったら、戦闘区域外とは言い切れない。戦争が起きる可能性は十分に考えられると思っている。防衛というものを真剣に頭を入れて欲しい」

 自民党副総裁の麻生太郎は8月31日、党麻生派(志公会)の研修会で講演し、台湾有事を念頭に、そう強調した。「台湾有事は日本有事」にほかならず、日本の防衛力の抜本的な強化が急がれる。

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