2022-09-22

【政界】日中国交正常化50年に複雑化する国際情勢 問われる岸田首相の「したたか外交」

イラスト・山田紳



リアリズムの行方

 岸田はこれまで、ロシアのウクライナ侵略をきっかけに、日・米・欧の自由主義陣営と中・露など専制主義陣営が対立する中で、G7各国との連携を最重視してきた。ただ、同時に中国側とは「建設的かつ安定的な関係」を築くため、「言うべきことは言う」という対話も排除しない姿勢をとってきた。

 岸田は、①普遍的価値を重視する②地球規模の課題解決に取り組む③国民の命と暮らしを守り抜く─ことを3本柱に据えた「新時代リア
リズム外交」を掲げている。

 今年6月に「平和のための岸田ビジョン」を発表し、「新時代リアリズム外交」の具体像として①「自由で開かれたインド太平洋」の新
たな展開②防衛力の抜本的強化と日米同盟・有志国との安全保障協力の強化③「核兵器のない世界」の推進④国連の機能強化⑤経済安全保障など新分野での国際的連携─を推進する考えを示した。

 日米同盟の強化と同時に、日中関係の安定化を目指してきた安倍政権の路線を基本的に継承する構えだが、ロシアのウクライナ侵略と北朝鮮の核・ミサイル開発などで日本を取り巻く安全保障環境は一段と厳しくなっており、岸田の判断が日本国民の生命に直結する。

 岸田は今年1月の施政方針演説で、「日本外交のしたたかさが試される1年になる」と語っていた。厳しさと複雑さを増す国際情勢の中で、中国の覇権の動きを牽制しつつ、日中間の対話パイプをどう持ち続けていくか。

 日米同盟を維持し、中国に対して言うべきことをしっかり言い、同時に日中の対話関係をどう維持するか。岸田の外交力の真価が問われるときである。(敬称略)

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