2022-09-26

【世界初のリサイクルアルミ材100%缶を開発】サントリーHDの脱炭素版「やってみなはれ」精神

100%リサイクルのアルミで製造された「ザ・プレミアム・モルツ CO2削減缶」(提供:サントリーホールディングス)

全産業に影響をもたらしている脱炭素。ビール・飲料業界では容器のペットボトルやアルミ缶のリサイクルが大きな課題になっている。各社が試行錯誤を繰り返す中、世界初の使用済みプラスチックの再資源化に続き、リサイクルアルミ材を100%使用した商品を発売したのがサントリーだ。商品の開発では各社で独自性を打ち出して鎬を削るが、容器開発では手を結ぶ事例も。創業以来の「やってみなはれ」精神をいかに発揮していくか。

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国内のアルミ缶消費量の2割強

「カーボンニュートラルに向け、 お取引先様との〝共創〟を推進していきたい」─。こう強調するのがサントリーホールディングス(HD)執行役員サステナビリティ経営推進本部副本部長・サプライチェーン本部副本部長の藤原正明氏だ。

 脱炭素の波がビール・飲料業界にも押し寄せている。飲料会社にとって悩みの種となっているのがビールや清涼飲料で使う「缶」と「ペットボトル」だ。これらは手軽に持ち運びができる容器として広く普及した半面、昨今のSDGsやESGの流れを受けて、その処理方法に各社が課題意識を持っている。

 その中でサントリーはリサイクルアルミ材を100%使用した缶入りビールを数量限定で販売している。2020年の国内のアルミ需要は約360万トン。そのうち食料品用途は約10%を占め、アルミ缶では約33.1万トンとなり、缶数にして217.9億缶となる。

 その中でサントリーグループは21年実績で約7.2万トンを国内で使用(酒類事業で約5.9万トン、清涼飲料事業で約1.3万トン)。全体の2割強に上る。「ペットボトル(同約12.4万トン)に次いで使用量の大きいアルミ缶の取り組みが重要」(同)だった。

 これまでもアルミ缶商品50〜60%のリサイクルアルミ材が使用されていたが、100%リサイクル素材のアルミ缶は実現していなかった。そんな中で開発したのが、今回の「ザ・プレミアム・モルツ CO2削減缶」と「同〈香る〉エール CO2削減缶」だ。

 ここでポイントとなるのが、サントリーグループが「スコープ3(自社以外のサプライチェーンにおけるCO2排出)」で動いた点だ。スコープとは温室効果ガス排出量の算定と報告の国際基準「GHGプロトコル」での定義の1つ。まず「スコープ1」は自社の活動に伴う直接排出を指す。次に「スコープ2」はエネルギー起源の間接排出。そして「スコープ3」がスコープ2以外の間接排出を指す。例えば取引先から原料を調達した場合、その取引先がその原料を製造するまでに排出した量を指す。

 要は自社のコントロールが及ばない範囲を指すわけだが、同社は動く。「サプライチェーンの最上流にある地金の調達が海外に依存していることに着目し、できるだけそれを使わないようにすることで、スコープ3の削減量が上がるように3社で協議して実現した」と藤原氏。

 協業した2社とはアルミ缶の鋳造や胴と蓋部分の加工を行うサプライチェーンの上流に位置するUACJ(旧古河スカイと住友軽金属工業)と東洋製罐グループホールディングスだ。3社で共同開発したアルミ缶は、通常のアルミ缶に比べて1缶当たり約60%のCO2排出量の削減につながる。世界初の技術だ。

 これまでの缶に使われていた新地金は、ほぼ100%海外に調達を依存しており、この新地金を使わない100%リサイクル缶を使用することで、国内におけるアルミ缶の水平循環が可能になることも視野に入れている。「使用済みのアルミ缶は全て国内で回収される」(関係者)ため、アルミ缶の資源を国内で賄うことも可能になる。

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