2022-09-26

【なぜ病院連携に成功したのか?】山形県・酒田市病院機構・栗谷義樹理事長に直撃!

地方独立行政法人山形県・酒田市病院機構・栗谷義樹理事長(日本海総合病院院長)



「かかりつけ医」のメリット

 ―― 製薬メーカーは米国に拠点を置いていた方が世界に流通させられると聞きます。

 栗谷 近年は日本の研究者、技術は海外に流出していると聞きます。薬剤の開発承認や治験などに際し、日本は関連規則や手続きなどが多い一方、支援体制は貧弱で、薬価の決定も変更が多く、国内外のメーカーは日本市場をスルーしているともいわれます。

 高齢化が先進国最速で進む我が国では国民医療費が増大し、高額薬剤が薬剤費用に占める割合も高くなっていくことは確かなので、今後は、国、保険者による何らかの介入が焦点となるかもしれません。

 ―― 自己負担をどうするかという問題にもなりますね。

 栗谷 負担と給付の問題も制度改正を巡る様々の場面で出て来ると思います。例えば、「かかりつけ医」制度は今年度の「経済財政運営と改革の基本方針2022」に、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行う」と明記されています。

 ―― 家庭医が大事だと主張する声も聞きます。

 栗谷 諸外国では初診時に基幹病院に来ることは殆どありません。その意味では、日本の医療機関アクセスは非常に良いのですが、そのことが医療提供体制の効率化、適正化の阻害要因とも考えられています。

 英国ではゲートキーパーの役割を担う家庭医へ国民の登録を義務付けており、「家庭医」が初診患者への対応や専門医療機関への紹介を担っています。医療機関の選択肢は一定程度制限されますが、基幹病院と診療所との役割分担は明確です。財務省はかかりつけ医の要件を明確にし、英国と同じように利用者が自分のかかりつけ医を事前に登録する制度の導入を求めていると聞きます。

 ―― 欧米では診療所クラスの家庭医という概念が根付いているのですか。

 栗谷 英国の家庭医は「General Practitioner」と呼ばれるようですが、日本でいう総合医(General Physician)」とは少し意味が違うようです。

 初期診療の制度は英国やフランス、などがかかりつけ医制度を運用していますが、英国の家庭医は患者に対する初期の総合的診断・治療に責任を持ち、国民全員が1人、もしくは数人のGPなどからなるGP診療所を家庭医として登録しています。

 家庭医は患者、家族にプライマリケアを提供し、必要な場合に専門医を紹介するゲートキーパー、コーディネート機能を担っています。制度は微妙に違いますが、似たような仕組みはドイツ、オランダ、デンマークなども作っています。

 今後はかかりつけ医の認定制度や人頭払いなどに焦点が移っていくと思いますが、かなり揉める展開になると思います。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事