2022-09-26

【なぜ病院連携に成功したのか?】山形県・酒田市病院機構・栗谷義樹理事長に直撃!

地方独立行政法人山形県・酒田市病院機構・栗谷義樹理事長(日本海総合病院院長)



地域医療連携推進法人が機能、コロナ禍でのクラスター対応

 ―― さて、栗谷さんは18年に地域医療連携推進法人「日本海ヘルスケアネット(HCN)」を設立し、地域の医療連携を進めてきましたね。日本海HCNは山形県酒田市の日本海総合病院を中心に、地元の医師会や介護施設などの法人で構成されていますが、この再編からコロナ禍で役立ったこととは何ですか。

 栗谷 日本海HCNでは感染が始まって間もない令和1年4月の理事会で、参加法人で共通の感染対策を行うことを申し合わせました。各参加法人の面会制限徹底から始まり、首都圏からのフライト医師を一時停止するなど、各法人の業務運営に関する取り決めを申し合わせました。

 軽症患者がオーバーフローした場合の宿泊施設での受け入れ、この管理に地区医師会が輪番で当たることや、医療機関、介護施設の濃厚接触者PCR検査結果は、その都度情報共有しました。職員については接触履歴が無くても症状があれば、経過観察とせずに日本海総合病院でPCR検査を実施することも決めました。

 参加法人のマスク、消毒用アルコール、防御衣などの在庫状況、各施設の入所者数などの共有も行いました。物品の在庫情報共有と並行して不足している法人への供給まで含めた体制づくりも行いました。

 連携法人参加メンバーの精神科病院「山容病院」で発生したクラスターへの「日本海HCN」としての対応を述べます。

 医療法人山容会は職員数208名、4病棟220床の精神科単科病院とグループホーム、有料老人ホームを運営する社会医療法人です。急性期、重度慢性期、認知症、身体合併症の各病棟に分かれていて、クラスターが発生したのは、身体合併症のある精神科病棟です。

 2020年12月1日未明に夜勤の看護補助者が発熱し早退、3日にPCR陽性が判明し、翌4日に院内の有症状者のPCR検査が行われて患者5名が陽性と分かりました。この時点で山容病院からの日本海HCNへ報告が入り、翌日に対象を広げて検査したところ、患者7名、職員5名の陽性が判明、職員は日本海総合病院に入院。患者感染者については全員が軽症なので入院のまま対応していくことにしました。

 連携法人としての支援を即刻検討し、いくつかの項目に纏めてすぐ支援に入りました。初動時を中心に、①医療資器材の提供②ゾーニング③職員派遣④PCR検査の受託などを直ちに実施しました。第一報の翌日には感染病棟の間取りを取り寄せ、日本海総合病院からスタッフが機材を持ち込んでゾーニングを実施しています。

 ―― 精神科病院に感染対策の人材も機材も派遣したと。

 栗谷 そうです。結果として全ての感染者が重症化には至らずそのまま全員回復、新規感染者も12月18日の1名を最後に出現せず、28日には終息宣言を出すことができました。

 委託検査件数は多い時で1日70件を超え、通常業務に影響が及ぶようになったので、本間病院から日本海総合病院の検査部へ応援技師1名の派遣が行われました。接触者職員分は日本海総合で行いましたが、陽性判明までに時間がかかると濃厚接触者が爆発的に増えるので、可能な限り白黒を早急につけるよう徹底しました。

 ―― その本間病院は医者数やベッド数はどのくらいですか。

 栗谷 病床数は158床、うち一般病床108床、療養病床50床、医師数は5名です。

 ―― 本間病院も日本海HCNに参加していたから連携が取れたということですね。

 栗谷 その通りです。業務支援として精神科医師、専門看護師、事務職員、放射線技師などの人的派遣も行いました。他に事務3名を山容病院支援に専任し、実務調整などに当たらせました。

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