2022-09-27

【日中国交正常化50年】早稲田大学・西原春夫元総長が語る隣国・中国との向き合い方とは?

西原春夫・元早稲田大学総長

にしはら・はるお
1928年3月東京生まれ。49年早稲田大学第一法学部卒業、56年同大学院法学研究科修士・博士課程修了、62年法学博士、67年早稲田大学教授、72年法学部長、82年総長に就任。88年全私学連合代表、98年国士館理事長などを経て、2005年アジア平和貢献センター理事長。07年瑞宝大綬章。

89回にわたる中国への訪問

 ─ 今年は日中国交正常化50年の節目を迎えます。足元では米中対立や台湾有事など懸念事項も多くありますが、日本は中国との共存をどう進めていくべきだと考えますか。

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 西原 中国といかに接していくかは、私の生涯にわたる大きなテーマの1つです。私は1982年6月から中国に通い始め、コロナが始まる2019年まで89回、中国を訪問しています。さらに、1988年から「日中刑事法学術交流」を始め、2年に1回ずつシンポジウムを開いてきました。このシンポジウムは35年間、17回を数えます。

 なぜ日中刑事法学術交流を始めたかというと、中国に法治主義を徹底すべきだという思いがあったからです。1978年から鄧小平による改革開放が訴えられましたが、実態は浸透していませんでした。法治主義など誰も知らなかったのです。そこでまずは刑法の分野から広げていこうと思ったのが最初です。

 ─ 法治主義の浸透を命題に掲げたわけですね。

 西原 ええ。当時の中国では新しい刑法が制定されてから10年も経っていませんでした。しかし刑法ではどこの国でも窃盗は悪い、殺人は悪いというように共通の価値観が多くあります。だから政治体制に違いはあっても、刑事法の共同研究ならできるのではないかと提案したのです。それで実現したのが88年に上海で行われた「(第1回)日中刑事法学術討論会」でした。

 ─ 反応はどうでしたか。

 西原 ものすごく評判が良かったのです。報告者のほか、裁判官や検察官、弁護士、刑務所の職員など傍聴者もそうでした。その結果、何と35年間で17回と続いてきたのです。今はコロナで中断していますが、コロナが終息すれば開催する大学も決まっています。

 ─ 西原さんが総長を務めた早稲田大学は中国留学生を多く受け入れていますが、今の中国での法治主義は定着していると言っていいですか。

 西原 少なくとも刑事法の理論の上では非常にレベルが高くなりました。ドイツや日本と同等なくらい発達しています。ですから、中国人の学者とも対等な議論ができます。そこでこれを国際法などの分野にも拡大させていこうということで、18年と19年に「日中国際法学者シンポジウム」を行ないました。

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