2022-09-27

【日中国交正常化50年】早稲田大学・西原春夫元総長が語る隣国・中国との向き合い方とは?

西原春夫・元早稲田大学総長



相手の立場に配慮

 ─ どこで行なったのですか。

 西原 上海で2回、東京で1回です。3回とも大議論となりましたが、夜の懇親会では和気藹々とした和やかな雰囲気で日本人と中国人との親睦を深めることができました。これができたのも日中刑事法学術交流を通じて培った信頼感があったからだと思います。

 中国人の中には日本人に反感を持つ人もたくさんいますが、中国人から信頼感を得ていれば、それは日本人であっても全く関係ありません。

 ─ それだけ西原さんが中国人との交流を深めてきたと。

 西原 例えば私が90歳の誕生日を迎えた4年前、日中刑事法学術交流30周年の記念シンポジウムが上海でありました。このとき中国の学者25人が660頁に及ぶ北京大学出版社の大論文集を献呈してくれたのです。少なくとも法律界では初のことで、日中の人物交流全体の中でも稀有なことだと思います。

 ─ なぜそういった関係を構築することができたのですか。

 西原 おそらく私が常に「中国の立場に立つ」という方針を堅持したからだと思います。欧米や日本のような民主主義国は自分たちの価値観が普遍的だと信じています。ですから、他国も本来は同じようであるべきだと思う傾向にあります。しかし、それぞれの国には歴史や民族性、置かれた国際環境の特殊性があります。民主主義が採れない国も当然あるのです。

 国の個々の行動についても同じです。その場合、民主主義国の人々が自分たちの価値観の視点だけから他国人の行動を批判したら、それは相手からは受け入れられず、むしろ反発を招くことになりかねません。逆効果です。ですから私はいつも中国の価値観体系の根本に立って、中国人が気付いていない観点から問題解決の理論を探るよう実践しています。これが長年友好関係を保てた理由です。

 ─ 対等かつ自由に対話する関係と言えますね。

 西原 はい。実は昨年の10月、中国の北京人民大会堂で「学術中国」という国際フォーラムが開かれたのですが、そこには6人の外国籍の学者が招かれ、日本からは私が選ばれました。コロナ禍でしたので現地での参加は叶わず、録画した講演を送ったのですが驚きました。

 最初は法律分科会の中の講演を予定していたようですが、送られた動画と原稿を見て開幕式での基調講演に回されたのです。そして、フォーラムの事務局によれば、開幕式に参列した中国共産党中央政治局委員の大物が私の講演を「非常に興味深い」と評価し、とても関心を持ったそうです。

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