社会主義は変化する
─ これは中国の要人たちにも響くかもしれませんね。
西原 そう思います。実はこの講演の後、中国で最も権威のある雑誌を出版している出版社から「あの講演はveryIlluminating(啓蒙的)だったので、是非あの講演を基礎にしたもっと詳細な論文を書いて欲しい」という要請がありました。党とも関係の深い雑誌社ですから、党の要請だったのかもしれません。
─ 大変なことですね。
西原 それを前提にして考えてみてください。中国のあるべき発展に貢献すると考えれば、あの中国も日本人であることなど全く意に介せずに、真剣に耳を傾けるのです。外からの批判より遙かに有効だと思いませんか。
現に私は論文の中で中国が目指す「理想社会」では国内的には少数民族を含む「人民」の幸せがますます強く追求されるだろうし、国際的には覇権や武力行使をしない方向になるはずだとはっきり示唆しています。自らがそう思うようになること。これが一番肝腎だと思うのです。
いずれにせよ、社会主義というのは元来変化することを前提にした政体です。ここが自らの価値観を普遍的と考える民主主義国と違うところなのです。変化する政体であるということを前提に考えなければ、中国の将来を読み誤ってしまいます。
─ その前提に立って中国と向き合っていくことが大事になってきますね。
西原 中国との関係は永年にわたる私の研究テーマでした。実践しつつ考え抜いた末に到達した方向性が、いま話したことに結実したようです。
かつてアジアの舞台で私見のような役割を演じ、一方において日本を、他方においてアメリカを自省させる国あるいは人があったら、あの無惨な戦争は避けられたかもしれない。そんな反省を踏まえたのが、これまで話してきた私の思想です。