2021-01-23

外国人トップを招聘した理由とは? 国内化学トップ・三菱ケミカルホールディングス会長・小林喜光氏が語る”ガバナンス論”

小林喜光・三菱ケミカルホールディングス会長

リアルとバーチャルのハイブリット系の時代

 ── 三菱ケミカルホールディングス会長の小林喜光さん、コロナ禍で社会が一変する中、トップ人事でベルギー人のギルソン氏を招聘しました。

 小林 これまで東京電力や東芝の社外取締役を務め、また政府系の会議で議論する中でコーポレートガバナンスについて考えてきました。前回の社長交代の際、私一人で正しい判断ができるか悩みました。外部の視点で客観的に後継者を選んでもらいたいというのも、5年前に当社が指名委員会等設置会社に移行した理由の一つです。現在、指名委員会は、社内は私1人、他の4人は社外という構成になっています。今回、社内含め国内外の優秀な経営者を検討し、最終的に全員一致でジョンマーク・ギルソン氏を選びました。

 リアルなモノを扱うよりGAFAに代表されるバーチャルな企業のほうが市場に評価される中で、時代に合わせてポートフォリオを変革し、企業価値を上げなければ、会社ひいては日本経済そのものが埋没してしまう危機感がありました。次期社長には、株主視点での企業価値を向上させることを第一に期待したい。

 もう一つは、「KAITEKI」の理念を継承し、儲けるだけでなく、イノベーションやサステナビリティの軸を加えた経営を進めて、事業を通じて社会に価値を提供すること。

 社内の意識変化も期待しています。言葉もそうですが、異なった発想、文化を持つ人が社長になれば、部下は自ずと変わらざるを得ません。変われと口でいうより話が早いですよ。

 ── 大変な改革の時期に入ったということですね。

 小林 世界が革命期なんですよね。コロナも問題ですが、より深刻なのは地球温暖化で、人類が自らの快適さのため化石資源を野放図に使った結果、地球が危機に瀕しています。

 また、産業革命により手足を外部化した時代から、今度は自分の脳を外部化し、その客体としてのAIロボットと共存する時代が来ている。今までの常識が通じない世界がまさに現実になっています。

 ── 米中対立など大国間の対立の影響もありますが、日本は中国など隣国とどう付き合っていくべきですか。

 小林 安全保障に直結するような分野では米国等と協調しつつ、環境問題やヘルスケアなど双方の利益になる領域で中国と連携していく。RCEPやTPPなどの多国間の枠組みを活用するのも有効でしょう。粘り強いアプローチが必要です。

 最後に一言、様々な課題に対して、サイエンスをベースにした対策を求めたい。何事もエビデンスに基づいて。それが今の日本に一番足りないことだと思います。

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