2022-10-04

YKK社長・大谷裕明の「混沌の今こそ、創業者の『善の巡環』思想で」

YKK社長 大谷 裕明



「現場」が見えにくいのが一番つらい

 ファスナーの最大手、YKKは世界72カ国で事業を展開(2022年3月現在)。全世界で扱うファスナーの95%以上は海外市場で販売している。日本で販売する本数は全体の5%未満でしかない。

 世界各地域での販売、生産の現場はどうなっているのか─。世界の現場の状況を常に把握しておかないといけないという大谷氏の思い。
「もし、今までのビジネスモデルでしたら、わたしは毎月、6地域に行かなければいけないわけです。アメリカへ行って、欧州に行き、アジアに行って、中国に行ってと。これは大変ですが、オンラインだと毎月6極の責任者と直接対話ができる。これは大変なメリットです」

 大谷氏は〝オンライン対話〟のメリットをこう語りながらも、「ところが、現場が見えてきません。これが一番きつい。いろいろな数字は見えても、費用がたくさんかかっているよねとか、あるいは生産がちょっとおかしいよねというのは、現場を見ないと分からないものなんですが、これが見えない」と強調。

 世界5極体制を敷き、6つの地域事業会社制を敷いているのも、各国・地域で民族、文化、嗜好、デザインの好みが違うし、そうした地域性に配慮してのもの。
 YKKグループはファスナーのYKKと建材のYKK APを中核に形成。2022年3月期のグループ連結売上高は7970億円、営業利益601億円(営業利益率7・5%)を計上。2021年3月期は売上高6537億円、営業利益263億円(営業利益率4・0%)と苦戦した。

 2020年度(2021年3月期)にコロナ禍で消費活動が抑制され、原材料の供給も縮小、購入価格も上昇し、それらはコストアップの要因となった。
 どう対応したのか?

 大谷氏は、この〝ドン底〟状況を、逆に体質改革の好機にすべきと考えた。ガバナンスの見直しもその1つである。
「ガバナンスというのは、時間をかけてやるものじゃないと思います。誰がそれを決めて、その決定プロセスがしっかりと公正な中で決定されたものかどうかはっきりしておけば、それでいいと思うんです。わたしどもの最終決議機関は取締役会ですから、そこに懸けるべきものと、そうではなくて取締役で決めることができる問題というのを分けているし、その通りにプロセスを踏んでいればいいと」

本誌主幹 村田博文

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