2022-10-04

【ファスナー世界最大手】YKK・大谷裕明社長「世界の各地のリーダーと常に対話できる体制を」

大谷裕明・YKK社長

「圧倒的コスト競争力を、もう一度磨き上げる」─YKK社長の大谷裕明氏はこう力を込める。2年以上前から、新常態下での持続的成長を見据え改革の手を打ってきた。さらに今はデジタル化が急ピッチで進むだけに、この対応も急務。地政学リスクもある中で、生産国・消費国としての中国、そして多様化する顧客にどう向き合うかなど、課題にどう対応するかが問われている。



次世代の製造機械を設計するプロジェクト


 ─ 世界が混沌とする中、企業体質の強化は重要な課題だと思いますが、コスト構造の改革に向けて、どのような考えで臨んでいますか。

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 大谷 当社は2020年度に次世代の製造機械を設計するプロジェクトを立ち上げました。22年以降、世界の情勢は厳しくなると見て、圧倒的コスト競争力を、もう一度磨き上げるという目的です。

 ある市場に対して、どんな商品を、どんな価格で販売すると、多様化するお客様のご要望にお応えできるかを考えると、このコストでなければならないという予測が立ちます。

 そのコストを実現するには、どのような性能の機械を設計・製造し、日本から海外事業会社に供給しなければならないかを考える必要があります。こうした製造から営業までの一気通貫のプロジェクトを進めています。

 そして、海外のそれぞれの地域で事業を統括する役割の人間を各地域のリーダーとして任命しています。そのリーダーとは、オンラインでの会議や打合せも含めて、逐次対話できるような体制にしています。

 ─ グローバルに迅速に動ける体制にしていると。

 大谷 ええ。最前線にいるリーダーの要望を、当社の「技術の総本山」である富山県・黒部事業所の開発者・技術者に伝えて、製造機械・設備を設計しています。早ければ、23年度から主要国に出荷できる見通しでいます。

 これらの一連の動きを取りまとめてくれているのは、旧組織下のファスニング事業本部長、工機技術本部長という肩書だった2人の副社長で、現在の組織下では営業本部長、製造・技術本部長となっています。彼ら2人がプロジェクトの立ち上げの2トップですが、よく頑張ってくれています。

 ─ 近年、産業界ではDX(デジタルトランスフォーメーション)も叫ばれますが、ファスナー製造に向けては技術面ではどんな工夫を?

 大谷 最高性能の技術でつくったファスナーを、最適なシステムでお届けする仕組みの構築を進めています。

 例えば、あるお客様のオーダーを1工場で請けた場合、製品のコードを統一化して、工場間をネットワーク、デジタル技術でバーチャルにつなげることによって、瞬時に最短納期で、最適な場所からファスナーを供給できるという仕組みの構築にトライしようとしているところです。

 最終的に大事になるのは、どうお客様とつながるかです。多くのお客様はフォーキャスト(Forecast=受注予測・需要見込み)を持ち、計画生産部分と受注生産部分を共有して生産をしています。

 我々はお客様から、今後どのような商品を計画しているかといった情報もいただいていますが、それは日々変わっていきます。それも当然です。現場のショップでの売れ行きやサステナビリティの潮流などからも需要は日々変化しているわけですからね。

 それを我々が今までのアナログ的な情報交換をしていては、そのスピードに付いていくことができません。

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