2022-10-03

【移民問題】日本国際交流センター・毛受敏浩氏が直言「日本は日本語教育を始め、必要な手立てを打っていない現実を」

毛受敏浩・公益財団法人日本国際交流センター執行理事



 

日本の政策は「意志表示なしの移民政策」?


 ─ 19年に「改正入管法」が施行されましたが、その後の変化をどう見ていますか。

 毛受 新たな在留資格として一定の専門性・技能を持ち即戦力となる外国人材を労働者として受け入れる「特定技能」が設けられたほか、「出入国在留管理庁」、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」もできました。

 その意味では、法改正の後、日本でも実質的な移民政策がスタートしています。しかし、これは国の「意思表示なしの移民政策」ではないか。なぜなら、メッセージ効果がありませんから、国民の意識は変わりませんし、海外に対する情報発信にもつながっていないからです。

 総合的対応策は毎年、改定され、また、今年6月には「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」もできるなど、方向は確実に移民受入れに向かっています。しかし、そのことを国民は知らない。

 ─ こうした取り組みを発信しない理由をどう見ますか。

 毛受 1つは「移民」の議論がタブー視されてきたことがあるのでしょう。例えば総合対策の中では外国人を「生活者」と表現しています。これは他の国からすれば移民であり、総合的対応策は、統合政策、移民政策を意味します。

 生活者という表現で、実質的な部分は進めようとはしていると。ただ重要なのは、移民という言葉を使うかどうかではなく、外国人との共生社会の実現こそが日本の未来の根本になり、「外国人と一緒に国の未来をつくる時代に入る」と政府がしっかりとした発信することだと思います。

 そうすれば、国民の意識も変わると思いますし、外国人との共生も進むのだと思います。また政府の「移民」の懸念は杞憂かもしれません。深刻な人口減少の中で、すでに多くの日本人が、もう外国人の存在なしには日本は維持できなくなることはわかっていると思います。

 ─ 外国人受け入れに関する議論は、ほぼ限界点まで達していると。

 毛受 ええ。この議論が始まりすでに30年が経過しています。その意味では、十分時間は使ってきており、今ではもう遅すぎるくらいです。「これから日本は外国人と一緒に共生する社会をつくる」と政府が方針を示せば自治体も企業も、一斉にその方向に動くと思います。

 国民の意識はすでに変わっていますし、移民政策をはっきり打ち出しても反発は少ないのではないでしょうか。外国人受け入れに関して政府が明確に方針を示すというのは、国際的にも非常にポジティブなメッセージになると思います。このままだと日本は衰退する一方と世界は見ています。

 そうした明確な姿勢がないと、人口が減り、人手不足になっても、他国からは日本は閉鎖的だとみられ、いい人が来てくれなくなり、質を問わず数の帳尻を合わせるような形になってしまいます。

 ─ 日本として「人材開国」の幕を切って落としたいですね。毛受さんはこの仕事に取り組まれて20年が経ちますが、やろうと思ったきっかけは?

 毛受 元々、国際交流をしていたこともありますが、本来、外国人と交流することは、視野が広がり、新しい発見があり、価値観が生まれるなど、日本人として得るものが大きいと感じます。人口激減の時代に彼らとともに日本を元気にするという発想は自分には自然なことです。

 外国人が入ることで日本はもっと楽しく豊かになり、閉塞感が強まる日本にとって多様性はやはり必要だと強く感じます。

 また、日本人は好奇心が強く、日本には異文化を取り入れて、それを元にイノベーションを起こしてきたという歴史があります。外国人の方々を、もっと大らかに受け入れて発展することが、日本の本来の姿だと言えなくもないのではないかと。

 ─ 確かに、日本は聖徳太子の時代に神道がすでにある中で仏教という外来文化を受け入れて融合させましたね。

 毛受 そうですよね。幕末から明治にかけて、欧米の先進技術や学問、制度、文化などを輸入すべく日本に招聘された「お雇い外国人」もそうですし、軍隊も陸軍は当初はフランス式で次にドイツ式、海軍はイギリス式を採用したという歴史があります。

 世界中から優れたアイデアを集めて、普通だったら混乱としてうまくいかないようなものを、きちんと統合して国をつくるという、すごい能力があるのが日本です。

 外からのエネルギーを自らのエネルギーに変えていく力がある。異文化を受け入れて発展するのが日本のDNAだと。異質なものを排除するというのは本来の日本の姿ではないのではないか。外国人の方々と協力して、新しくイノベーションを起こし、発展していく道を探ることが大事だと思います。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事