2022-10-04

三井住友トラストHD・高倉透の「三位一体戦略」 投資家、起業家、金融機関をつなぐ資産運用

高倉透・三井住友トラスト・ホールディングス社長



全社員を対象にした「株式報酬制度」を検討


 日本では、どうしても個人と投資の距離が遠いという課題がある。「貯蓄から資産形成へ」が進んでこなかったのも、リスクを避けて、元本が保証される銀行預金に資金を眠らせてきたことが大きい。それをどう身近なものにしていくか。

 そんな中、三井住友トラストでは今、全社員を対象とする「株式報酬制度」の導入を検討している。その狙いは何か。

「今、我々は資本市場の好循環の実現を目指して取り組んでいる。そのためには投資家の裾野を広げていくことも大事。我々の社員は投資へのご理解を深めてもらいながら、新たな投資家を生み出す活動をしているが、そのためにも社員にはトップレベルの投資教育を身につけてもらう必要がある」

 これまで以上に社員に投資の知見を深めてもらうと同時に、株主として、会社の向かっている方向を理解した上で仕事にあたってもらいたいという狙いを持っている。三井住友トラスト株の配当利回りは4%台後半のため、社員自身のポートフォリオ上もプラス効果が見込める。

 その意味で今後さらに、金融教育の重要性が増している。三井住友トラストは確定拠出年金の活動を通じて、「投資教育をやればやるほど、投資に踏み出す方が多いことを実感している」。

 さらに今、「人生100年時代」と言われる中で、相続などを含めて次世代にいかに資産を継承していくかが大きな課題。これはまさに信託銀行の仕事だが、ここにも投資の観点が必要になってきている。

「以前は70歳くらいで資産の多くを換金して、遺言を作成して誰にいくら遺すかを決めておられた。しかし今は、70歳から20年間生きられる可能性があるということで、ある程度運用しながら増やしていかないと、生活やレジャーを楽しむだけの資金が得られない」

 そのため、ある程度の年齢になっても運用の継続を希望する顧客が多くなっている。ただ、その過程で認知症などになるリスクもあるため、家族が代わりに運用したり、資金を引き出すことができるようにしたいといった相談が増えているのだ。信託銀行が役割を発揮すべき局面になっているということ。

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