2022-10-06

24年ぶりの円買い介入も効果に限界 円安・物価高で苦境の政府・日銀

今後も米欧を中心に 金融引き締めは強まる中…

今年3月から半年余りで30円も下落した急激な円安に対抗するため、政府・日銀は9月22日、1998年6月以来、約24年ぶりとなる円買い・ドル売り介入に踏み切った。

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 市場関係者によると、介入額は約3兆円と、1日の円買い介入としては過去最大規模となった模様。ただ、お札を刷れば理論上、無制限に介入できる円売り・ドル買い介入と異なり、円買い・ドル売りは外貨準備の範囲内でしか行えない。

 外貨準備は8月末現在で約1・29兆ドル(約185兆円)あるが、大部分は米国債などで運用しており、介入の原資を確保するために売却する場合は、米国を始め国際社会の理解を得る必要があり、ハードルが高い。日銀OBも「売却できるのは現金で保有するドル(約20兆円)に限られる」と認める。

 日銀が大規模緩和を維持しているにもかかわらず、円買い介入で市場の円を吸収すれば、金融引き締め効果が生じ、円金利の上昇につながってしまう矛盾もある。これを防ぐために、日銀介入で吸収された分の円資金を改めてオペ(公開市場操作)で市場に供給して相殺(不胎化)する措置が考えられる。

 金利の上昇は抑えられる一方、日米金利差は縮まらず、介入による円安抑止効果を削いでしまう。逆に介入効果を重視して円資金を供給しない非不胎化を選べば、「円金利の上昇を容認した」と市場で受け止められ、金融政策修正への思惑を呼んで国債市場が不安定さを増す恐れがある。

 今後も米欧を中心に金融引き締めの流れが強まる中、日銀だけが独り大規模な金融緩和を続ける構図は変わらない。このため、「伝家の宝刀」(財務省筋)である介入カードを切っても効果に限界があるのが実情。ただ、日銀総裁の黒田東彦氏は、来年4月の任期満了まで金融政策の修正に動く気配はない。

 このため、政府・日銀内でも「大規模な緩和の手仕舞いを担うのは次期総裁の仕事」との認識が広がっており、それまでは限りあるドル原資を元手にタイミングを慎重に見計らいながら介入を繰り返し、円安進行に歯止めを掛けることを目指す苦しい防戦を強いられそうだ。

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