2022-11-01

【厚生労働省】介護保険制度改正に向けて給付と負担の議論に着手

2024年度の介護保険制度改正に向け、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の介護保険部会で、「給付と負担」に関する議論が始まった。部会では、人材確保や介護現場の業務軽減など様々な議論が行われるが、制度の財政基盤強化のため、給付と負担の見直しは最大の課題となっている。

 介護保険制度は原則3年に1度の見直しとされている。21年度改正の際には、利用者の自己負担額の上限について、年収770万円以上の高所得者は月4万4400円から同9万3000円に引き上げるなどした。

 介護保険の財源は公費と保険料で半分ずつ賄っている。20年度の介護保険事業状況報告によると、利用者負担を除いた給付費は前年度比2・7%増の10兆2311億円で、初めて10兆円を超えた。被保険者の保険料も、制度が始まった2000年度の約3倍に上がっている。

 9月26日の介護保険部会で厚労省が示した資料では、これまでに政府や財務省側が検討を求めてきた事項を列挙するにとどまった。要介護1、2の人の一部サービスを市町村事業に移行することやケアプラン作成の有料化、40歳以上としている被保険者の年齢引き下げなど、いずれも過去に議論されながら実現に至らなかったものだ。

 省幹部は「介護の重点化や効率化はかなりやってきた。難しいものが積み残っている」と指摘する。実際、部会に出席した委員からは「これ以上将来世代に負担を先送りすべきではない」「介護サービスの利用控えにつながる」といった賛否両論が出た。

 この幹部は「合意を得るには大変なプロセスがいる。どうかすると、一つもまとまらないということもあるのでは」との見方も示す。保険料が上がり続けていることを踏まえ、「それでも不断の努力をして、保険料の伸びをできるだけ緩やかにすることが、国民のために必要だ」と強調する。

 24年度の制度改正に向け、23年の通常国会に関連法の改正案を提出するため、年内の残り3カ月で具体的な内容を固める流れだが、別の幹部は「全員から合意を得るなんてできないだろう。厚労省の政策はどうやってもたたかれてしまう」と厳しい表情を浮かべていた。

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