2022-11-29

【政界】「聞く力」だけでなく「日本をこうする!」という政策や情報発信が求められる岸田首相

illustration by 山田 紳

「日本の改革をこう進める!」というメッセージが求められる中、なるほど、岸田文雄政権は物価高克服と日本経済再生の実現に向けて「総合経済対策」を打ち出す。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題が尾を引く中で、下落傾向が続く内閣支持率の回復を狙ったもの。経済対策に伴う2022年度第2次補正予算案の国会論戦はこれからがヤマ場。激しい与野党攻防を前にして、首相の岸田は東南アジア諸国を歴訪し、外交力をアピールしたい考えだ。

【政界】日本再生が必要な今、なぜ岸田政権は旧統一教会問題で躓くのか?



政治主導の経済対策


 政府は10月28日の臨時閣議で、電気・ガス料金の抑制策や出産・子育て支援拡充策などを柱とする総合経済対策を決定した。国と地方の歳出と財政投融資を合わせた財政支出は約39兆円。民間投資などを含めた事業規模は約71兆6000億円に上る。第2次補正予算案の一般会計は29兆1000億円になる。

「総合経済対策の取りまとめに当たっては政治主導、大局観を発揮することを重視した」。岸田は決定を受けた記者会見で、そう強調した。「見通しがたい世界規模の経済下振れリスクに備え、トップダウンで万全の対応を図ることにした」とも語り、自身がリーダーシップをとった政治主導の経済対策であることをアピールした。

 経済対策には、電気・ガス料金などの高騰に対応するため、来年1月から9月まで平均的な一般家庭で総額4万5000円程度の負担軽減策を導入した。また、妊娠した女性を支援する制度を新設。出産準備金として妊娠届と出生届を提出した際に計10万円相当を支給するなど、出産・子育て支援の拡充策も盛り込んだ。

 さらに、賃上げの実現に向けてリスキリング(学び直し)を支援するため5年間で1兆円を投じることも打ち出した。そのほか、円安環境を生かしたインバウンド(訪日外国人客)の回復や、NISA(小額投資非課税制度)の恒久化なども掲げている。

 岸田は政治主導だけでなく、「聞く力」もアピールする。記者会見で「与党の政策審議プロセスを例年より早く動かし、電気料金の激変緩和措置の大枠は与党党首で決めた」「野党の提案についても、参考とすべきものは直接お伺いする機会をつくった」と主張した。

 実際、岸田は公明党代表の山口那津男と10月11日と14日の2回も党首会談を行っている。政府は当初、負担軽減策は電気料金だけを想定し、ガス料金には慎重だった。

 だが、山口は「ガス代も併せてやらないと公平性が保たれない」とし、ガス料金も支援の対象とするように要請。岸田は14日の党首会談後、電気料金だけでなく都市ガスやガソリンについても負担軽減策をとる考えを表明した。

 岸田は10月20日、国民民主党代表の玉木雄一郎と会談し、同党が独自にまとめた緊急経済対策の中身を聞いた。翌21日には、日本維新の会代表の馬場伸幸とも会談し、日本維新が掲げる消費税率の一時的な引き下げなどの提言を受け取った。


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