2022-12-12

『匠のノウハウをAI化』 NECが目指すソリューション戦略

AIで失敗を疑似体験



「匠のノウハウをわれわれが議論を重ねて、理解していくことで、匠が答えにたどり着くプロセスを“見える化”していく。そのプロセスをほかの設計者が理解することによって人材育成効果も期待できる。ベテラン技術者の技能伝承という課題は他の会社もあると思うので、そうしたお客様へ支援させていただきたい」

 こう語るのは、NECのデータサイエンティスト、AI・アナリティクス事業統括部シニアエキスパートの近藤節氏。

 近年、製造業では生産年齢人口の減少による人手不足や熟練技術者の高齢化が顕著になっている。技術や経験、ノウハウの継承やデジタル技術の活用が急務となる中で、NECが住友ゴム工業と協業し、タイヤ開発における“匠”のノウハウをAI(人工知能)化することに成功した。

 住友ゴムのタイヤ技術本部技術企画部担当部長の原憲悟氏は「経験やノウハウが主体で、効率化は無理と諦めていた部分を自動化するぞ、教育・育成・ノウハウ伝承も出来る方法も開発するぞということで、設計の自動化を検討した。ただ、AIのことが分からないのでNECに相談した」と話す。

 これまでタイヤ開発の現場は、熟練の設計者とテストドライバーのコミュニケーションにより成り立っており、体系化が難しかったという。そのため、今回、住友ゴムの熟練設計者とNECのデータサイエンティストがタッグを組み、匠の思考プロセスを“見える化”。

 AIが学習できるようにデータ化し、経験の浅い設計者へ匠の技能やノウハウを伝えようという取り組み。住友ゴムはこのAIを活用することで、若手設計者をより高度な技術開発に充てていく考え。

 NEC執行役員の清水一寿氏は「現在は失敗が許されづらい環境になっているからこそ、AIで失敗を疑似体験することができ、失敗経験から多くを学びながら行動することができる」と語り、今後は他の製造業にも展開していく方針だ。

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