2021-02-05

双日社長・藤本昌義の「現地ニーズの深掘りで独自のビジネスモデルを」

昨年5月、トルコで最大規模の病院が開院。この運営に参画しているのが双日だ


(2020年秋季特大号から)
 


東南アジアで独自の経済圏を



 アジアと欧州の架け橋、トルコ・イスタンブール。2020年5月に市内のイキテリ地区に、一般病棟から小児科病棟、精神科病棟まで、病床数2682床を有する『バシャクシェヒール チャムアンドサクラシティ病院』が開院した。日本で最大の病床数を誇るのは約1400床を有する藤田医科大学病院だが、同病院はその倍近くの病床数を構えるトルコ最大規模の病院だ。

「病院の開院によって、トルコと日本の友好関係が一層発展することを祈念する」

 開院記念式典で、トルコのエルドアン大統領はこのように挨拶。トルコ政府肝いりの大型病院開院となった。

 この病院、実は運営に参画しているのが日本の総合商社・双日。2017年に同国では日系企業で初めてPPP(Public Private Partnership=官民連携事業)形態での施設運営事業参画を決めた。総事業費は約2000億円。双日はその一部を担う形で、ヘルスケア事業の強化を図る考えだ。

「医療関係のビジネスは今後、トルコや東南アジアも含めていろいろなチャンスがある。同病院への運営を通じて医療サービスの向上を図ると共に、病院運営で得られる知見やノウハウを様々な国々で展開することができたら」

 双日社長の藤本昌義氏はこう語る。

 近年、アジア各国の急速な経済成長により、医療ニーズも増加。三井物産はすでにアジア最大級の民間病院グループ、マレーシアのIHHヘルスケアに出資。三菱商事は現地企業と合弁で、ミャンマーに総合病院を建設する計画だ。株式会社による病院経営が厳しく規制されている日本と違って、アジアの病院運営ビジネスに日本の大手商社が相次ぎ参画している。

 海外でノウハウを獲得し、いずれは日本で……という考えはどの会社も思っているはずだ。

 こうした状況にあって、双日は、シンガポールのスタートアップ企業テツユウ・ヘルスケア・ホールディングスにも出資。ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)を活用した遠隔医療システムを提供する同社との連携で、オンライン診療や医療情報の共有化に関するノウハウを取得し、将来的には日本を含めたアジア市場での事業拡大を目指している。

「これから人口が伸びるのはアジアであり、スタートアップへの出資も含め、医療ビジネスを進化させていく。もっとも医療分野だけに留まるつもりはなく、アジアの消費を一緒に取り込んでいく。例えば、ベトナムには穀物・飼料から食品卸、まだ小さいがミニストップという販路もある。食品をつくる総菜工場もあるし、製紙工場にも出資しているので、これに病院をつなげていくことができれば大きな経済圏になる」(藤本氏)

 同じ商社でも、伊藤忠商事は中国、三井物産はロシアやブラジルといったように、各社は得意エリアを持っている。双日におけるベトナムはまさにそうした地域。前身の日商岩井時代だった1986年、西側諸国の企業の中で初めてベトナムに駐在員事務所を開設することを許可されて以来、ベトナムにおける双日は他商社も一目置く存在となっている。

 こうした強みを持つ地域で独自のビジネスモデルを構築した上で、「現地ニーズを深堀りし、当社独自のビジネスモデルをアジアの国々に展開したい」と語る藤本氏である。

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