2021-02-09

コロナ危機、そして国内市場縮小の 中、次の成長をどう図るか――アサヒグループHD・小路明善の「国内でビールの進化を図り、グローバル成長を!」

--{現地のトップに任せて}--

 小路氏は16年春、社長に就任するとすぐ、『長期ビジョン』と『中期経営方針』を掲げた。その骨子は、国際(グローバル)事業を成長エンジンにし、〝稼ぐ力〟を強化していくというもの。

 そのグローバル戦略を担うのは、各国・各地のトップたち。そこで、小路氏は、「グローバル展開はハンズオフ(手渡し)の経営にしよう」と決めた。「いわゆるホールディングスがグリップを強くし、世界の事業をコントロールしていくというやり方は好ましくないと。それがわたくしの考え方であり、なるべく現地に任せるという経営をしていこうと」

 その理由は何か?

「例えば欧州にしても豪州にしても、また東南アジアにしても日本にしても、GDP(国内総生産)や気候、風土も違えば、生活者の嗜好品に対するニーズも違います」

 小路氏はこう切り出しながら、次のように続ける。

「日本市場でいえば、新ジャンルが家庭用で伸びていますが、欧州では、プレミアムビールが伸びている。豪州で人気なのは、われわれで言うイージードリンキングで、若い人たちが飲むコロナみたいなビールです」

 国や地域によって、飲み方や酒類を通してのコミュニケーションの仕方も違う。豪州のCUBが扱う『グレートノーザン』はイージードリンク、つまり気軽に若い人が瓶ごと飲むというスタイル。

「そういうエリアによって、こういった嗜好品に対するニーズは違うと。その違いを全て把握して、日本のヘッドクォーターが事業をコントロールするというのは、これはやっぱり無理があるというふうに考えています。したがって、エリアエリアで事業の変化に対する最適な経営が取れるようにということで、リージョンヘッドクオーター(RHQ)を置いて、その傘下にエリアの事業会社をつくりました」

 日本、欧州、豪州、そして東南アジアの世界4極の中で、欧州8カ国の市場を統括するのはアサヒヨーロッパアンドインターナショナルという配置。このように、各国・地域に責任者、トップを置いて、傘下の事業を見るという仕組み。シンク・グローバリー、アクト・ローカリー(Think globally,Act locally)─。グローバルにモノを考え、その地域の風土に合わせて行動。

「わたし自身も世界の事業から学んで、われわれホールディングスも各事業会社も、世界の事業から学んだことをローカルとホールディングスが自分たちに落とし込んで、経営能力を高めていきたい」と小路氏。

本誌主幹・村田博文

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