2021-02-09

コロナ危機、そして国内市場縮小の 中、次の成長をどう図るか――アサヒグループHD・小路明善の「国内でビールの進化を図り、グローバル成長を!」



 ビール産業でいえば、コロナ禍による外出自粛、飲食、観光分野の営業自粛などが相次ぎ、料飲店向けなどの業務用の需要が激減。国内ビール大手4社(アサヒ、キリン、サントリー、サッポロの4ブランド)はビール系飲料の2020年の販売量は4社合計で1割減。 コロナ禍による打撃で、特に飲食店向けの販売減が響いた。特に、アサヒは販売量全体の半分を占める『スーパードライ』が飲食店の営業自粛が響いて前年比22%減の6517万ケース(1ケースは633㍉㍑大瓶20本換算)に落ち込んだ。

 ライバル・キリンは低価格の〝第三のビール〟の『本麒麟』が好調で19年比で32%増の1997万ケースを販売。主力ビールの『一番搾り』は24%減少し、〝第三のビール〟でカバーした感じ。この結果、キリンがビール類のシェアで37・1%となり、11年ぶりにトップに立ったと見られる。ちなみにアサヒは35・2%。

 シェア競争については、ひと昔前と違って、業界内にも冷静に対応する空気が生まれている。アサヒグループは小路氏が事業会社・アサヒビールの社長を務めていた2014年から数字の発表を止めようと提案してきている。「シェアでなく、価値を争う競争にしましょう」というのがその理由だ。

 コロナ禍で当分、業務用ニーズは低迷する見通し。そこでアサヒは『スーパードライ』ブランドでイノベーションを実行。缶ビールの蓋を取ると、ジョッキのように泡が出てくる『アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶』を4月から販売。コロナ禍で業務用が痛手を受けた半面、巣ごもり需要が発生し、もっと家庭用の需要を掘り起こそうという『生ジョッキ缶』の投入である。家庭で生ジョッキを楽しむ缶ビールという発想だ。

 商品の進化を─。『スーパードライ』は1987年の発売開始から33年が経った。やや守りの姿勢というか、「保守的になっていたのではないか」という自省をこめての反転攻勢。数(シェア)を追うのではなく、商品価値・事業価値を上げていくという小路氏の思いである。

本誌主幹・村田博文

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